『キノの旅』  第三話「迷惑な国」


 天気のいい日、「森の人」を片手に何事かを悩みながら、とりあえずハンモックで昼寝するキノ。

 ハンモックとか……。水辺の木陰でハンモックとかっ……! うわぁー旅人になりたいっ。事実、ヒダマルの小学生時代の夢は「旅人」でしたからね。ハイ黒歴史ですね。

 
 そこに謎の地響きが。
 地震かと思いきや、徐々に大きくなっている。そう、「巨大な何かが、徐々に接近している」のだ。
 エルメスに乗って移動しながら確かめると、天を衝く巨大な塊が動いている。たぶん人工物なのでしょうが……。

  

 おそらく国だと考えたキノは、「賭けだな。賭けだ……。でも、いい考えは思いつかなかった」と呟いて、親指を立てるのです。

 おいおいそんな軽いジェスチャーでこの巨大な国が反応するわけが、って男の声で返事が来ましたよ。スピーカーとか一切見えないのですが。
 旅人であり、滞在を希望する旨を伝えると、ゆっくりとキャタピラが止まり、丸いエレベーターが降りてきました。ビジュアル的に人が出てくるのかと思いきや、現れたのは一台の車両です。スケールが違いますね。

「案内人兼色々」と名乗る平凡そうな中年男性に、キノは、ちらりとエルメスを見た後、「5日から10日ほどの滞在」を申請しました。
 おや。キノルールでは「一つの国には三日間」がお約束のはずですが。
 冒頭で悩んでいた件と関係がありそうです。

  

 さて、観光です。
 国の動力炉。
 いかにも近未来的メトロポリス的宇宙の旅的な青白い光を放ってますね。「ザ・動力炉」ですね。これが動力炉じゃなかったら、なにも動力炉じゃないでしょう。
 住居区。
 ビルディングが所狭しと並んでいます。まあ、巨大と言っても敷地面積は少ないでしょうから、この構造は自ずと然りです。

 この「動いている国」、構造上の理由からほとんど停まることが出来ないため、ずっと移動を続けているのだとか。旅それ自体もみんなが好きで、「国民全員で旅をしているんです」と嬉しそうに語る案内人兼色々です。


 夕方、豊富なお湯をたっぷり使ってシャワーを浴びるキノ。キノはシャワー大好きですからね。そこへ清潔なシーツとくれば、髪が乾かないまま寝てしまうのも致し方ない。

エルメス「うまくいくかな?」
キノ「さあね。それも四、五日で分かる。――さて寝る」
エルメス「あ、キノ――」
キノ「話はまた明日。おやすみ」

 翌日、濡れた髪で寝たせいで頭が爆発しているキノでした。前髪とかまるでキュアショコラ。アニメって良いですね……。

 


 今日も案内人と観光を続けるキノとエルメス
 最上階。
 権力者が一人占めしたりすることなく、貴重な日光をみんなで共有しています。平和で和やかな、良い国だ。
 城壁(?)の上。
 高所恐怖症には向きませんが、つまりヒダマルは無理ですが、良い眺望です。
 しかし、国が通った後は、巨大なキャタピラに掘り返されて荒れ地と化しています。木も岩も土も水も、トラクターに耕された後のように混ざり濁っていますね。こりゃひどい。
 案内人兼色々さんは、「こればかりはどうしようもない」と言い切ります。

 そして、幼年学校の卒業記念として、壁画を描く子ども達を見学するキノ。キノは、実は子どもも好きですからね。子どもと接するときは、口調とか表情とか柔らかくなるのです。

 

  ある日、大地を耕しながら旅を続ける「動いている国」の前に、進路上の谷を城壁でキッチリ塞いだ「通せんぼの国」が現れます。外交官でもあった案内人兼色々さんと共に中枢部へ赴き、対応を見学することに。
 どうでもいいですが、この指令室を設計した人は、たぶんエヴァオタクです。ヤマトかな?

 

 突如出現した巨大な「動いている国」に、臨戦態勢の「通せんぼの国」。将軍が出て来て応対するようです。外交官VS将軍です。
「国を横切らせてください」と頼む外交官ですが、当然断ります。即決です。
「このままでは我が国が通れない」という意見と「侵略行為は許さない」という意見がぶつかり、戦争の様相ですよ。

 

  国の上部を覆うドームを展開し、守りを固める「動く国」。相手の大砲を受けてもまったく動じません。「困った人たちだなあ」と頭を掻く外交官。

「あなた方の国の、田園地帯を通り抜けます」と宣言し、高出力レーザー(マジか)で城壁を破壊し、有無を言わさず侵入します。

 畑だろうと家だろうと踏みつぶしながら国土を耕す「動く国」に、「通せんぼの国」は当然ブチ切れますが、手の打ちようがありませんねコレは。


 しかし、嫌がらせとばかりに「子ども達の壁画」を狙って攻撃してくる「通せんぼ」。「パースエイダーで、ミサイルの誘導装置を撃ち抜く」役を買って出たキノは、「フルート」を使って活躍します。
 まあ、今回見せ場が無いですもんね。主人公なのに。

 

  他国を破壊し、一方的に蹂躙して去った「動いている国」。
「どんな国も、どんな人間も、ある程度他人や他国に迷惑をかけながら存在しているものですよ」
 と語る案内人と別れ、モトラドでの旅に戻ったキノとエルメスは、「どっちも迷惑な国だった」と感想を述べます。

 実は、高い城壁で谷を塞いでいた「通せんぼの国」は、通行する旅人から金品をふんだくっていたのです。つまり「動いている国」と同じように、自国の特性を暴力として活かしながら荒稼ぎしていたのですね。キノに対しては、「森の人」を要求したのだとか。

 

 すとんと腑に落ちないというか、考えさせられるお話ですよね。「結局、これ、どっちが悪いの? 被害者は誰?」と、明確な答えが欲しくなります。

 世論は「完全な被害者」「完全な加害者」を求めがちですが、現実にはそんな単純な構図は珍しいものです。誰にも非があるし、誰にも理がある。

 こんな感じのお話は、原作では他に「用心棒」「森の中のお茶会の話」「いい人達の夕べ」なんかがヒダマルは好きですが、うわぁ見事に全部「師匠」関連だっ。

 現実の複雑さを作品内で表現して皮肉る時雨沢恵一さん、大ファンです。これからも書き続けてくださいっ。


 次回、「船の国」。
 続けてダイナミックなの来たなー!
 2話連続の「動いている国」ですよ。原作では、この2つの国の他に、もう1話だけ「国自体が動いている国」が存在しているのですが、知ってます? 「遊牧民」はナシで。

 正解は次回の感想で!