『だがしかし2』 第三話「ベーゴマと追憶と……」


 神社の境内で、ベーゴマに紐を巻く豆くん。ココノツは巻き方を検索しつつレクチャーしています。ネットって便利です。
 巻き終えたら、投げて回します。独楽ですからね。
 気合を入れて地面へ叩きつける豆くんですが、

 運悪くサンダルを履いていたココノツの足に突き刺さりました。

 豆くん、ベーゴマの投げ方違うから。

 

ベーゴマと追憶と…


 ベーゴマは小さいので、デコボコした地面では回しにくいことに気付く男子たち。そこへ、ほたるさんが現れました。彼女、今日はポリバケツ持参です。
 流石、分かってらっしゃる。
 というか、毎度毎度どうやって嗅ぎつけて来るんでしょうね。


 彼女が持ってきたポリバケツは、「ベーゴマの台」にするためです。ここに布を張って使います。更に、中央付近を沈めておくことで「すべての独楽が自然と中央に集まり、激しいバトルが繰り広げられる」という特典付き。

 しかし、肝心の布が見当たりません。


ほたる「心配ご無用」

 と、おもむろに。
 ココノツと豆の見ている前で、ほたるさん、自らのスカートに手をかけました。

ほ「このスカートを外してっ、」

 そしてっ。
 脱ぎましたッ!!

ほ「ベーゴマ台の布にするわっ!」

 ほたるさん……
 前々から、羞恥心無い人だとは思っていましたけど……。それもう痴女ですから。身体張りすぎですから。


 ……と思いきや。

「このスカート、二段構造になっているの。すごいわよねぇ?」

コ(なるほど)
豆(いいなぁ……!)

 下から現れたのは、短めのスカートでしたとさ。
 しかし、男にとっては、「スカートの中はスカートの中」です。女性のみなさん、気を付けなはれやっ。

 

 

 セッティング完了。
 ほたるさん曰く、彼女はベーゴマを極めているのだとか。いつものように蘊蓄を語りながら紐をまきまき中ですが、しかし彼女はこういうの……、

ほ「さあ、見てて御覧なさい!? ほたる疾風投げッ!!

 運悪くサンダルを履いていたココノツの足に突き刺さりました。
 ……うん、苦手ですよね。運とか勝負事とかからっきしでしたよね。野球盤ガムも全部ハズレでしたっけ。

 


 ベーゴマの投げ方を練習する豆とココノツ。
 実は「投げる」というより、「引く」ことが重要なのです、ベーゴマは。こち亀でやってたので知ってます。触ったことないけど。見たこともないような……

「時代劇の、「良いではないか」の理論よ」

 例えもえろいほたるさんです。

 

 改良を重ねて辿り着いたマイベーゴマ「ほたるスペシャ」を片手に、2人に真剣勝負を申し入れるほたるさん。
 そして、

「この戦いに負けた人は、勝った人の願いを何でも聞く。――ってしたらどうかしら?」

 こんな提案をぶち込んできました。
 いつものちょいエロだと思い込んだ豆は鼻の下伸ばしてお気楽こいてますが、ココノツの表情は引き締まりましたね。
 そう。
 彼女、枝垂ほたるには、ある目的があるのです。……普段は忘れられがちですが。

 それは、「ココノツに駄菓子屋を継がせること」
 父が手掛けるお菓子会社へ、ココノツの父・鹿田ヨウを迎え入れるためには、駄菓子屋の跡継ぎが必要なのです。

 

 ほたるさんの目論見を見抜き、緊張感を高めるココノツ。
 そこへ更なる訪問者が現れます。

「みんな、ここにいたんだ。何してんの?」

 遠藤サヤ師……!
 そうでした、この方を忘れてはいけません。何を隠そう、サヤ師はこーゆー遊びの天才なのですよっ。第一期ではメンコで無双してましたからね。けん玉とか残像が見えるレベルですからね。


 彼女が、この戦いに加わるとなると……
 勝負が、面白くなってきました。

 

 

ほ「みんな。準備は良い?」

 開戦ッ!!

 4人一斉に、ベーゴマを放ちました。ベーゴマに初めて触ったっぽいサヤ師のも、きれいに回っています。そもそも初心者は枠内へ入れることも難しいはずですから、彼女のポテンシャルは押して知るべし。侮れない相手です。


 初めに弾かれたのは、ココノツ印のベーゴマ。サヤ師のヤツに負けてしまいました。これで、彼の運命は他の3人に託されたことになります。それで良いのか主人公。

 そして、豆の独楽はほたるさんにやられました。
 これで、ほたるVSサヤの構図へ。

 

 ほたるさんのスカートの上で、激しくぶつかり合うベーゴマ。
 勝負は互角に見えましたが――、

 ほたる印のベーゴマが、場外へ飛んで行きました。

 

 

 

 草むらに飛んで行ったほたるスペシャルを探す面々。「確かこの辺に……」と視線を下げたココノツですが、彼の視界に入ったものは、


 ほたるさん(四つん這い状態)の後ろ姿でした。


 スカートは、短いです。
 黒タイツが、けっこう奥まで見えそうです。
 木漏れ日が、おしりの動きに合わせて形を伝えてきます。

 魅入ってしまうココノツでしたが、


「ココノツ……?」


 一言。

 我に返った彼の隣に立っていたのは、この戦いの勝者でした。
 腕を組んでの仁王立ち、口元は一文字、限界まで絞られた瞳孔は『とらドラ!』の高須竜児もかくや。「身勝手の極意」みたいな青白いエネルギーを放ちつつ、ココノツを静かに睨んでいます。


 結果、「ベーゴマにやられた足を踏んづけられる」という制裁を味わったココノツくんでした。不可抗力なのに……
 ってか、そんな『NARUTO』みたいなん履いてくるから……

 

 

 

 

 

(……来た…………)

 駄菓子屋の扉を開け放ったのは、ひとりの女の子。

(また来た……。変な子どもがまた来た……)

 店内にいるのは、いかつい顔で新聞を読んでいた、頭の禿げたお爺ちゃん。


「相変わらず雑多な店だわ」

 店に入るなりそう言い放ち、店内のレイアウトにダメ出しを始める女の子。かなり偉そうです。何様のつもりでしょうか。お子様ですねその通りですね。

めっちゃ駄菓子屋の在り方とかについて語る子どもが来た……

 お爺ちゃん、ちょっと困惑。


 駄菓子の歴史について語り始めた女の子ですが、ちょっとつっかえてしまいます。そこへ、助け舟を出すお爺ちゃん。
 女の子は調子に乗って「それじゃあこのベーゴマは?」とクイズを出します。

お爺「平安時代、バイ貝を使って遊んだのが始まりと言われ、バイ独楽と言われていたのが訛ってベーゴマとなった

 うおぉ、お爺ちゃん博識ですね。こういうのを「打てば響く」って言うんでしょうか。


 この街唯一の駄菓子屋のことを悪しからず思っているらしい女の子。けれど、店に他のお客さんが居たことは一度もありません。

「今の子は、もう駄菓子じゃぁ喜ばないのかもな……」

 お爺ちゃんの弱気な言葉を聞いた彼女は、サイコロキャラメルとベーゴマを手に、百円玉3枚と、十円玉2枚を置いて。

 

「私は明日も来るわ」

 

「明後日だって」

 

「何度でも、来るわ」

 

「そこに、駄菓子がある限り」

 

 

 

 


 ……ほたるさんが、夕焼けの街角に佇んでいます。

 彼女の視界に映るのは、空き地。
 西日に包まれて、だから影も生まれて。「売地」の文字と、昔はアイスクリームが入っていたのであろう冷蔵庫と、「森元商店」の看板が打ち捨てられた、小さな空き地でした。

 


 歩きながら、ココノツに電話をかけるほたるさん。

「ココノツくん?」

 特に用事とかではないのですが。

私ね。シカダ駄菓子が、大好きよ

 改めて伝えておきたい。そんな気分なのでした。

 

 次回、「ホームランバーと花火大会と……」。