『ゆるキャン△』 第六話「お肉と紅葉と謎の湖」


 放課後、誰もいない図書室でぬくぬく過ごす志摩リンちゃん。お団子を乗っけた頭の中では、長野の思い出を反芻しています。
 長野と言えば、なでしこに渡すお土産「チョコ饅頭」がまだ鞄の中に……、あれ? お土産と一緒に、見覚えのない箱が入っていますぞ?

 少し考えて、思い出したリンちゃん。
 朝、リン宛に届いていた荷物をお母さんから受け取った際に、鞄に入れたのです。

リン(何で出がけに渡すかな……)

 確かにそうですが、リンのねぼすけの所為でもあります。何故そのまんま鞄に入れた。何故持ってきちゃった。

 


 まぁともかく、開けてみましょう。ごそごそ。

リン(これかー。長野に行く前に注文したんだっけ……。思ってたより小さいな。単行本くらい?)

 一人で納得してますが、何でしょうねコレ。金属製で、長方形で、確かに本みたいなサイズです。
 きょろきょろ。辺りを見渡すシマリン。よし、誰もいないので、ここで組み立てちゃいましょう。
 あちこち金具を広げた末に、姿を現したのは、


(コンパクト焚火グリル……! 買っちった。


 嬉しそうだー。

 

 

 


 ほうほう、持ち運びに便利な簡易焚火グリルとな。
 これさえあれば、直火禁止のキャンプ場で焚火とか、炭火を使って美味しい料理とか、

(肉……。)


(キャンプで焼肉…………!)


 とか、色々と夢が膨らみますね。

 

 

 

 

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〈公式サイトより引用〉Ⓒあfろ・芳文社/野外活動サークル

 

「あ、またニヤニヤしてる」

 リンの表情変化を見分けられるこの人物は、親友の斉藤恵那さんですね。リンに負けず劣らずの大ボリュームマフラーですね。

「なにこれ。メタル賽銭箱?
「違うわ」

 確かに、そう見える。

 


 外での一人焼肉を想像する、リンと恵那ちゃん。

恵「リン、初めになに焼く?」
リ「とりあえず、タン塩かな」
恵「おぉー。いいねえ」

 お、富士山をバックに、心象風景に突入しましたよ。
 広大な景色の中、リンちゃんがお肉を焼いてます。一人焼肉なら、この小さいグリルでも楽しめそうです。

 

リ「次は豚バラ。これも塩で」
恵「うんうん」

 良い音してますねー。
 美味しそうですねー。

 

恵「私はー、塩豚トロとかいくかなー」
リ「おぉ……。それもアリ」

 なんだよこの采配。打順完璧じゃねぇか天才かっ。

 

恵「ご飯食べつつカルビ焼いて、ロースハラミはタレでっ!」
リ「やばいやばい……っ」

 寒空の下、焼きたてのお肉を頬張るリンちゃん。滅多に見られない笑顔ですよ。幸せそうだ。
 しかし、うん、やばい。
 このアニメはやばい。
 逃げるなら今です。

 

恵「ホルモンもいこっかー」
リ「私、白コロホルモンでっ」

 はむはむ。
 もぐもぐ。

 

恵「一度網を綺麗にして、」
リ「もう一度、塩物を軽く食べる」
恵「そうそうっ」

 ぐううぅぅぅぅおぉおぉぉぉぉぉぉ……
 誰か、だれかヒダマルの口にお肉をぶち込んでください………ッ!!

 

リ「で、最後にスープで〆っ」
恵「アイスもあるよ?」

 アイスもあんのっ!?
 って、恵那ちゃんいつの間に店員さんに? その伝票は何?


「お会計、三万五千円となりますっ


高けぇよ。自炊焼肉でなに食ったらそんなになるんだよ


 奥義・低血圧ツッコミ……!!

 

 

 


「明日のお昼は、それ使ってここで焼肉やろうねっ」
「大惨事だわ」

 テロ計画を企てる友人と別れたリンちゃんは、司書としての仕事を始めます。本を棚に戻すため、抱えて歩いていると、


 足が落ちてました。


 これはギクッとなっちゃいますね。
 もちろん、足は同体に繋がっております。タイツを履いた足は、スカートの中に収まり、更に視線を動かすと、


 なでしこの寝顔が落ちてました。

                      

 リンちゃん、とりあえず蹴っとく。

 

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〈公式サイトより引用〉Ⓒあfろ・芳文社/野外活動サークル

 

 

 


なでしこ「2人が楽しそうに話してたから、なんか入っていけなくて……

 なるほど、あんな盛り上がってたら途中から入り辛いっすよね。分かる。そして床で寝ますよね。いや分かんない。
 とりあえず、丁度良いので長野土産を渡します。

な「お土産っ!? 私に?」
リ「生菓子だから、早く食べなよ」
な「ありがとうリンちゃん~! 大事にするよっ!!
「いや食えよ」

 

 

 

「なにこれ。ミニ賽銭箱?」
「お前もか」

 リンと一緒にチョコ饅頭を食べつつ、なでしこも賽銭箱に気付きました。

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〈公式サイトより引用〉Ⓒあfろ・芳文社/野外活動サークル

 

リ「あのさ。それで今度、肉焼いてみる?

 おぉ、リンちゃんからのお誘いです。
 野クル部のノリは苦手っぽい彼女ですが、なでしこには結構積極的ですね。ここんとこ急接近してますもんね。あと、食べ物関連は全部なでしこに振っとけば間違いないですからね。

「やる! やろうよ焼肉キャンプ!!

 案の定大喜びですが、キャンプって言うか「野クル活動の一環として、家の庭とかでやってみる?」くらいの提案だったと思うのですが、

リ「いや、キャンプという訳じゃ、」
な「そうだっ!!」

 聞いちゃいねぇ。
 なでしこの勢いに押され、次の土日にキャンプの予定がねじ込まれました。もうすぐ期末試験らしいのですが。
 まぁ、かなり喜んでくれてるので良しとしましょう。ところでチョコ饅頭ですが、

リン(ほとんど食い終わってやがる……)

 大事に食えよ。

 

 

 

 

 

 土曜日。

「それじゃぁ、しゅっぱーーつ!」

 なでしこのお姉ちゃんの車で、キャンプ場まで送ってもらえることになりました。原付と違って暖かいことに感動するリンちゃん。


 向かうは四尾連湖キャンプ場というトコみたいですが、なでしこが選んだ場所です。どちらかと言えばマイナーっぽいですね。
 そんなキャンプ場を、どうしてなでしこが知っていたかと言うと……

 


 野クル部室にて、先達の意見を伺うなでしこ。
 あおいちゃんの解説によると、キャンプ場はざっくり分けて、

・林間キャンプ場
・臨海キャンプ場
・芝生キャンプ場
・展望キャンプ場
・河川・湖畔キャンプ場

 の5種類があるそうです。テストに出そうです。


 そして、「四尾連湖」の情報をくれたのは千明部長。

千明「地元住人にもあまり知られていない所で、湖には謎の巨大魚が生息し、管理棟のテラスには、謎の激うまBBQがあるとかないとかぁ……!

 

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〈公式サイトより引用〉Ⓒあfろ・芳文社/野外活動サークル

 

 野クル部の長としては、前々から調査せねばと思ってたそうな。眼鏡を無駄に光らせて、なでしこの肩をがっしとつかみ、

千明「各務原隊員っ、現地調査を頼めるかねっ!!」
なでしこ「ぅ分かりました、隊長っ!!」

 

 

 ……という、感動のやり取りがあったのです。

リン「なんだその小芝居」

 ああ、さっきからリンちゃんが的確且つ端的なツッコミを入れてくれるせいで、ヒダマルがツッコむ余地がない……。芸風似てる人がいるとやり難いな。あ、でも、「大事に食えよ」は我ながら上手いこと言えたと思います。はい。

 

 

 

 

 途中のスーパー「ゼブラ」で、お肉を仕入れます。

な「リンちゃん、お肉なに買ってく?」
リ「そうだな……。豚バラ、カルビ、豚トロ、ホルモン、ハラミ、タン、ロース……

 リンちゃんもはらぺこあおむし化してますね。どんだけ食う気だ。

(しかも、今回の焼肉は、備長炭で直火焼き)

 心の声に合わせて、リンの瞳がうっすらと。
 何かを決意したような、どこかでSEEDが弾けた後のような、そんな目つきに変わって行きます。

(外ご飯効果で3倍美味しいとすれば……!)


(絶対やばいぞこれは……ッ!!)

 

 

 


 お肉コーナーにて、立ちすくむリンとなでしこ。
 えぇっとですね。状況を説明するとですね、大変申し上げ難いのですが、


 バラとカルビしかありません。


リンマイノリティ殺し……ッ!!

 あああ、リンちゃんが泣いてるっ!? 絶望に跪いちゃってる!?


 友の窮地を救うため。目を凝らし、希望の光を探すなでしこ。おっと、焼き鳥を発見しました! ねぎまとか、豚串とかありますよ。

「焼き鳥……?」
「うん、焼き鳥っ! 炭焼きだったら、串物だって美味しいよ!!」
「そうか。炭焼きと言ったら、ハンバーグとかも……」
「アリだよ、リンちゃんっ!」


 ……足に、力を入れて。
 絶望から、ゆっくりと立ち上がり。
 仲間と、視線を交わします。

 若人よ。
 一度折れた心ってなぁ、強いぜ。

 

 

 

 大量の食材をカゴに入れ、レジへ向かう2人。
 すると、聞き覚えのあるまったり関西弁が出迎えてくれました。犬山あおいちゃんです。ここでバイトしてたのです。

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〈公式サイトより引用〉Ⓒあfろ・芳文社/野外活動サークル

 

 こんな店員さんいたら毎日行くな……。小一時間歩いてでも行くな……。っていうか、先週のアレを見たせいで、気になってしょうがないな……

 

 

 


 一方その頃。

 野クル部の長・大垣千明さんは、次のキャンプ場候補へ下見に訪れていました。部長らしいことやってる姿は初めて見ますね。
 前回のキャンプでは、梱包されて歩き疲れて寝過ごしてましたし。


 一人で山を散策していると、テントを発見しました。
 見ると、初老の男性がソロキャンプ中です。

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〈公式サイトより引用〉Ⓒあfろ・芳文社/野外活動サークル

 

 年季の入ったワンポールテント。
 焚火台に、木製ローチェア。

 落ち着いた色味のコートにはいくつかのポケットが付いており、足元はふくらはぎまでを覆う頑丈そうなブーツです。奇を衒わず、機能美を重視したアイテムの数々。テントの隣には、大型のバイクが停められています。
 短い白髪は顎髭と一体化し、口元の髭も相まってダンディな風貌です。

 

千明(なんか、コーヒーのCMとかに出てきそうだな……)

 そして、なにより、

おおっ、肉うまそう……!!

 焚火台に置いたスキレットの中では、分厚い肉が焼かれています。
 千明が見とれていると、男性がこちらに気付きました。鋭い視線を投げかけられた千明は、ちょっと緊張。

 しばし見つめ合った後、男性は軽く右手を挙げて、「こっちに来な」というジェスチャー。
 警戒しつつ、リスみたいな動きで接近した千明に、

 

 一言。

 


「……肉。食うかい」


 大塚明夫Voice……ッ!!

 

 

「いいん、ですか……っ」

 外はじっくりと焼き、内側はレアに調理されたステーキ。
 薄く切った牛肉を渡され、口に運びます。

「うまっ!!」

 彼女の感想と、喜びの表情を見た彼は。
 髭の奥で微笑を浮かべ、ほんの少しだけ瞼を細めて、

「ふ…」

 渋ぃ、しびぃぜ爺さん……

 

 

(渋い爺さんだった……。肉、めっちゃ美味かったし)

 ダンディの化身みたいな男性と別れ、散策に戻った千明。

(スキレット、買っちゃおうかなぁ……)

 うん、これは買う流れだ。
 バイト頑張ってね。

 

 

 

 


 各務原一行は、目的地「四尾連湖」に到着しました。
 湖の周辺には、紅葉が広がっています。一面黄色です。湖面に映った木々が揺れています。

 キャンプの場所は、湖の対岸にあるみたい。
 一輪の荷車に荷物を載せて、お姉ちゃんと別れる2人。明日の昼頃まで、自由なキャンプタイムです。

 

 

 妹と別れた、桜お姉ちゃん。

 テラスに座り、ホットチャイを飲みつつ、「うまい」とぽつり。四尾連湖を眺めつつの小休止です。
 桜さん、絵になるなぁ……

 …………。

 声かけたいけど、どうすればいいんだろう。

 

 


 ススキが揺れる湖畔を歩きながら、

リン「そういえばここって、紅葉以外にも、牛のお化けの言い伝えで有名らしいね」

 どんがらがっしゃん。

 なでしこさん、派手にすっ転びました。顔から行ってますねコレ。大丈夫?
 しかしこの感じ、どっかで見た記憶が……。あ、あれだ。「おすわりって言われた時の犬夜叉」だ。
 

「お、お、おおぉぉお…………、オバケ、出るの……?」

 ぶるぶる。

リ「苦手なの……?」

 寝ぼけた人が、見間違えたのさ。

 

 

 

 

 今回は大塚さんのキャンプ解説はありませんでしたが、超渋いお爺さんの声で登場したのがサプライズでした。ああいう渋さが醸されるのなら、歳をとるのも悪くないです。まぁヒダマルはもっとほにゃほにゃした爺ちゃんになりそうですが。その頃もアニオタやってんのかな……?

 あと、特筆すべきシーンはやはり、リンと恵那の焼肉シミュレーション。
 肉が美味しそうなのはもちろんですが、リンちゃんのお口から洩れるはむはむ音、もぐもぐ音が耳に心地良い。天国です。ありがとう。東山さん、ありがとう。ヒダマルは強く生きて行けそうです。


次回、「湖畔の夜とキャンプの人々」。