『スロウスタート』 第七話「ぐるぐるのてくび」


冠「お誕生日おめでとう。ピン子」
栄依子「ピン子て……」
たまて「えらいことになりましたねぇ~」

 はい、なっちゃってますね~。
 十倉栄依子さんの頭、ヘアピンだらけです。色とりどりです。

 どうしてこうなった。

 

 

 

 今日は栄依子のお誕生日。
 人気者の栄依子さん、クラスメイト全員からプレゼントを貰ったは良いものの、全部ヘアピンだったそうな。とりあえず全部つけたんだそうな。

 なんか、こういう仏像ありますよね。「金箔を貼って徳を積む」みたいな信仰の対象っぽいです。


 この上、花名とたまちゃんからもヘアピンを追加され、それから柏手を打たれ、

たまて「限定ライブ当たりますように限定ライブ当たりますように限定ライブ当たりますように限定ラァイブ当たりますようにーーッ!!」


 心から拝んじゃってるたまちゃんです。ですよね、そうなりますよね。
 ちなみに花名の願いは「栄依子ちゃんの一年が、幸せなものでありますように」でした。なんて良い子だ。ヒダマル泣いていいかな。

 

 

 

 そこへ、榎並先生がやってきました。

「うわ。何事だお前それ。十倉ピン子か

 一目見るなりそう言いました。ええ言いました。相変わらず口の悪い教師さんです。好きなアイスは「バナナチョコミントハワイアン」です。


 そして、神妙な面持ちで栄依子の肩に手を置いて、

榎並「若いうちはゴチャゴチャ飾るのがオシャレとか思いがちだがな……、お前それ、10年後絶対後悔するから……

 なんか勘違いしています。

 


「誕生日? なるほど。それでそのめでたい格好か」
「うわぁ、なにかしらこれ~、悪意しか感じない……」
「ないない悪意とか。「コイツ人気者気取りかよー」とか思ってない、ぜんぜん」
「うわぁ、清瀬さんひどーい」
「下の名前で呼ぶなよ……」

 榎並先生と栄依子の応酬。
 怖い。なんか怖い。この2人の絡み方怖い。


「ま、誕生日おめでとう、十倉。私からもプレゼントをやろう」

 そう言って、栄依子の髪に手を伸ばす先生。恥じらいつつ身を任せるピン子さん。前回の、冠ちゃんの「はむっ」レベルの画が来ました。

 榎並先生から贈られたのは、

「どうだ? 嬉しいか?」

 

 クリップ。

 

 事務用のクリップ。
 何の飾り気もないクリップ。
 一山いくらで売ってるクリップ。


「安心しろ。私物だから返却不要だ」


 そうか、この2人ドS同士だから見ててヒヤヒヤするんだ……ッ!!

 

 

 贈られた栄依子はというと、クリップを真ん中から折り曲げて、ハートの形にして、

「お気持ち受け取りましたっ💛」
「返せ」
「あれ? 返却不要なんじゃ?」

 負けてませんね。

 

 

 

 その後、ピン子は栄依子に戻って。

たまて「栄依子ちゃんて、榎並先生にグイグイ攻めて行ってましたねぇ」
栄依子「うん。ああいうタイプ好きなの」
花名「ああいうタイプ?」
栄依子「この前もね、先生に「卒業したらお友達になってください」って言ったんだけど……」


榎並「お前が卒業して私がなるのは、友達ではなく恩師だ」


「いいわよね~そういうトコ……」

 栄依子さん、かむちゃんをふわふわしながら陶酔に浸ってます。貰ったクリップも、なんだかんだでちょっと嬉しいみたい。
 栄依子心はよく分かりません。

 

 

 

 お手洗いから出てきた栄依子を、冠ちゃんが待ち受けていました。

冠「お誕生日、おめでとう……」
栄「あら。このタイミングで?」
冠「あえて」
栄「あえて?」

 以心伝心です。


「じゃあはい、付けて」と伝えて頭を下げる栄依子さんですが、冠ちゃんは彼女の左手を取り、小指に指輪をはめました。

冠「ヘアピンは被るかと思って。あえて」

 サプライズ来ましたね。
 流石は冠ちゃんです。伊達に日々ふわふわされていません。栄依子さんも驚いてます。


栄「ねぇ、この指輪、かむだと薬指のサイズよね?」

 なぜか知ってる十倉さん。

冠「しらない」

 そっぽを向いちゃう千石さん。

 

 

 


 職員室にて、榎並先生とお話する花名ちゃん。

「学校の方はどうだ。嫌なこととか、ないか?」

 栄依子には見せない顔で問う榎並先生です。うん、こう見えてちゃんと人は選んでます。
 そういえば、先生は花名の秘密「浪人したから実はイッコ上」を知る人物の一人なんですね。そのクセして、初日に「今日は誕生日」とか抜かして彼女をピンチに追い込んだんですね。


 気が弱く敏感な気質の彼女を心配する先生でしたが、

花名「あ、いえっ。えっと……、楽しいですっ

 嬉しい返事が返ってきました。


「最初の頃は、馴染めないんじゃないかって不安だったんです。でも、今はもう、大丈夫な感じで……。その、空気が優しくなったというか、馴染めてきたのかな、って……」

 つっかえつっかえ、嬉し恥ずかしそうに語る教え子に。

榎並「いやそれは馴染んだというよりも、お前らが仲良くなったってことだろ

 先生も、思う所を素直に述べました。


 お弁当を食べて、

 勉強会して、

 お泊りして。


 うん、仲良くなりました。
 いつのまにか、仲良くなってました。

 

 

 


 仲良くなった、4人での帰り道。

 打ち合わせナシのプレゼントで、クラス全員からヘアピンを贈られた栄依子の奇蹟に感動するたまちゃん。

たまて「このようなこと、もう卒業式までないかもしれませんねー!」

 そして始まる、卒業式。


た「楽しかったー」
冠「誕生日―」

た「思い出に残ったー」
冠「栄依子のヘアピンー」

「修学旅行とか差し置いて、私のヘアピン……!?」

 いやいや、あり得ますよ。
 差し置く可能性ありますよ、あなたの求心力なら。


花「栄依子ちゃんがいつも付けてるそのヘアピン、すごく綺麗だよねっ」
栄「え。そう?」
冠「似合ってる」
た「大人っぽいキラキラが、栄依子ちゃんっぽいと申しますかぁ!」

 チャームポイントですからね。
 コレがないと実は一番目立たないキャラデザしてますしね。重要です。花名ちゃんも地味ですが、この子はこの子でよく見るとワケワカンナイ髪形してますし……


た「どこで買ったんですかぁ、このこのぉう」
栄「ひみつ」
た「うぅ、隠しておきたい名店というやつですかぁ!」
栄「ふふ」
た「う……。これ以上は踏み込ませないという絶対的な圧を感じるー……」

 ATフィールドですか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ソファで眠る、榎並先生。
 ひとつ呻いて、

「飲み過ぎた……」

 頭を抱えて起床です。
 そして、瞼を開けると、

 

 手首を布で縛られた、十倉栄依子の寝姿が。 

 

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〈公式サイトより引用〉Ⓒ篤見惟唯子・芳文社/スロウスタート製作委員会

 

「と、十倉……?」

 きょろきょろ。

「ウチだよな、ここ……?」

 知りませんけど、たぶん。

 


 あ、床に転がってた栄依子が起きました。先生、すごいビビってます。

「おはようございます、先生」
「ぉぉ……」
「んん~……。あのまま寝ちゃったかぁ。すみません、コレ、外してもらえます?」
「ぉ、ぉぉ……」

 ぐるぐるの手首を解放して。

「ありがとうございます。お手洗いお借りしますね」

 なんか普通に起きて挨拶して歩いてる十倉栄依子を見送って。


(なんだ、コレ……?)


 なんでしょうか、コレ。

 

 

 

 

 


 昨夜。

 爽井沢駅の近くで友人(女性)と飲んでいた榎並先生は、べろんべろんに酔い潰れていました。
 そこへやってきたのが、十倉の栄依子さん。

(酔ってる……。かわいい……)

 街灯に寄りかかって眠る榎並先生に、そんな感想です。

 

 飲んでいたお店に忘れ物を取りに行かなきゃなご友人に、「送って行きましょうか? 先生のこと」と提案する栄依子さん。
 お言葉に甘えた友人さんですが、高校生の教え子に身柄を託すとかちょっと不謹慎ですが、おそらく栄依子の雰囲気に飲まれたのだと思われます。あの有無を言わさない感じ。

 


 榎並先生をマンションに送った栄依子さん。

「今日の西村はなんだか十倉に似ているな……。なんでだ~?」
「ん~、十倉本人だからでしょうか……」
「そうか十倉か……」
「はーい、十倉ですよー」


 肩を貸しつつ、とりあえずソファまで。

 座らせようとしましたが、バランスを崩して一緒に倒れ込んじゃいました。ラッキースケベな栄依子さんです。

 この手の位置とか動きとか。
 何度でも言いますがね、こういう自然なのが好きですよヒダマルはッ!

 


「十倉ってのはウチの生徒でな」
「あ、まだ続くんだこの話」

 なんか面白そうだと直感し、掘り下げようとする栄依子。

 

「ね、十倉さんってかわいい?」
「いいや、かわいくねぇ」
「わぁ即答だひどーい」
「十倉はなぁ……。なんだろうなアイツは。なぁ、なんだと思う?」

 本人に聞く酔っぱらい。
 問いかけが深淵すぎますって。


「ひとつ言えることはだな……」
「うんうん」
「かわいくね……」
「うわー」

 栄依子、うとうとしてる先生の顔を眺めてご満悦です。

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  〈公式サイトより引用〉Ⓒ篤見惟唯子・芳文社/スロウスタート製作委員会


 先生にお水を渡し、お暇しようとする栄依子。うん、流石にお泊りまでする気はなかったみたいです。
 しかし、

「帰るのか……?」

 え。
 ちょっと。
 なにそれ榎並さん。


「帰りますよ、そりゃ」
「……帰るのか…………」

 だから。
 ちょっと。
 なんですかそれ榎並さん。
 その赤ら顔+困り顔+弱々しい声+上目使いは何を意味してますか? 勘違いしてよかですか?

 

「いてほしいんですか?」
「いてほしいのか……?」
「こっちが聞いてるんだけどなー。……いてほしいなら、いますけど?」
「いてほしいなら……」
「いますよ」
「いるのか……」


 甘えたがりな榎並先生にソファのカバーをかけて(適当)、もう休むように促す栄依子。
 素直に横になるかと思いきや、

「お前あれだろ。私が寝たらいたずらとか落書きとかするんだろ」
「えー、しませんよぉ」
「いや、お前は信用できない」


「よし、縛っておこう」


 大胆な結論に至る酔っぱらい。

「ええー」
「両手出せ」
「はーい」

 どことなく嬉しそうな栄依子さんです。ノってます。

 ぼやぼや……

 

 

 ……時は戻って。

「みたいな、感じです」
「いや、うん。私が全面的に悪い。私が悪いんだが……。お前ももう少し抵抗しろよ

 失敗を謝る榎並先生に、「先生がしおらしくなってる……!!」とツボる栄依子。ちなみに、自宅には「友達の家に泊まる」と連絡してあるので、無断外泊ではありません。
 ずっと縛られてたはずですと?

「お前ほんとは自分で外せたんだろ」

 その通りです。

 

 

 

 今日は平日。ということは、お互い学校がありますね。
 先生がシャワーを浴びている間に、栄依子がコーヒーを淹れます。なにこの素敵な朝。

 並んで座って、コーヒータイムです。

「お前砂糖とか入れないのか」
「ブラック派です」
「女子高生が生意気な」
「先生もブラックですよね」
「大人だからな」
「酔っぱらって生徒に介抱される大人」
「う……」
「いいと思いますよ。かわいくって」
「嬉しくねぇ」

 

 

 

 

「遅刻したら遠慮なく付けるからな」

 線引きキッチリな榎並先生。けれど、栄依子は今日、花名と日直でした。早めに学校に聞く必要があるのです。


「真面目だなーお前ら……。まぁこっちとしちゃーありがたい話だが」

 帰ってシャワーを浴びるとすると、ギリギリっぽいですね。「汗臭いかなー…」と気にする栄依子を見て、

 不意に身体と、


 顔を寄せて、

 

 

 

 

 

 

 

 


 離れて。

 

「別に。良い匂いだぞ」

 

 


「そうですか。それはよかった……」

 立ち上がり、すたすた歩いてバッグを持って、「それじゃあ失礼しました。また学校で」と言い残し、あっさりと玄関を出る栄依子。

「おう。まっすぐ帰れよー」

 

 


 扉に寄りかかり、バッグを胸に抱えて、

(なに……? なにこの勝ち試合だと思ったら最終回で逆転喰らったみたいな感じは……っ!?)

 どぎまぎしちゃう栄依子さんでしたとさ。

 

 

 


 無事登校した栄依子さん、花名と日直のお仕事です。

「おはようございます、先生」
「おう」
「おはようございますっ」
「くどいな、分かったよ」
「お・は・よ・う・ご・ざ・い・ま・すっ」
「…………おはよう」
「はい良く出来ましたー」
「調子乗んな」

 早朝に引き続いて火花を散らしてます。めげない栄依子さんです。

 


 と、
 その時。

 榎並先生の胸元に青く光る、ネックレスが目に入りました。


 先生の肩をつかみ、凝視する栄依子です。

「先生……、このネックレス……」

 昨日、ご友人と会う前にぶらぶらしていたら見つけたそうです。


花名「きれいなネックレスですね」
榎並「ああ。良い色だろ、これ」

 先生の言葉に、なぜか放心状態の栄依子さん。どこか照れくさそうに「すごく似合ってます、それ」と伝えて、お別れしました。

 

 

 

「あの……、栄依子ちゃん」
「ん?」
「あの……、さっき、先生と話してた時、栄依子ちゃん何かあったのかなぁって」

 うん、この子はほんに敏感です。
 本人は大変でしょうけど、それで助けられてる人も多いはずです。

 

 


 内緒話をするため、「私の秘密スポット」たる高台へ案内された花名ちゃん。学校の敷地内でしょうか。それとも外?
 たまちゃん風に言えばここでイベントスチルな状況に、

(内緒話、秘密スポット! 人には言えない話……。すっごくヤバい話……!!)

 ぐるぐるの花名ちゃん。
 友人の手を取って、

「栄依子ちゃんっ、大丈夫っ! 何があっても、私は栄依子ちゃんの味方だからっ!! 大丈夫だからねっ!!」

 この子はどこまでも良い子です。

 

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  〈公式サイトより引用〉Ⓒ篤見惟唯子・芳文社/スロウスタート製作委員会

 


 先ほど、榎並先生が身に着けていたネックレス。
 朝の光を、きらきら反射させていた、青いネックレス。

「あれ作ったの……、私」

 なんと。

「私、アクセサリー作るのが趣味なのね。これとか、自分で作ってて

 チャームポイントのヘアピンを指さす栄依子。なんとまあ。
 花名ちゃんも驚いてます。


 親が雑貨店を営んでいて、栄依子の作った物を置いてくれているのだとか。つまり、先生は栄依子が作ったとは知らずに、純粋に作品に惚れて購入したのです。

「じゃあ、先生は気に入ったから買ったんだねっ!」
「うん」
「すごいねっ! すごい……!!」

 自分の作品を買ってくれた人を、リアルに見たのは初めてだったのです。それが、榎並先生。


「なんか……、なんかね。すごく…………」
「よ、よかったねっ、栄依子ちゃん……! よかったね……っ!!」
「もう、どうして花名が泣いちゃってるの」

 感極まった感じの栄依子さんに、完全に感極まってる花名ちゃんでした。

 

 


 これが、栄依子の内緒話。
 といって、誰かにばれても特に問題はないそうです。秘密と言っても色々ですね。

「実はね、アクセサリー作ってること、人に言ったの、初めてなの」
「えっ」
「花名が初めて」
「そ、そんな大事な秘密を教えてもらうの、私が最初で良かったのかな……?」

「えー? 私は話したのが花名で良かったって思ってるけど?

 

 

 

 

 


「お前らが仲良くなったってことだろ」

 

 


(本当に、そうなのかな)

(そうだといいな……)

(いつか私も話せるかな)

 

(自分の秘密を、みんなに……)

 

 

 

 

 

 

 

『スロウスタート』第七話、栄依子&榎並先生回でした。

 ピン子主体かと思いきや、榎並先生もガッツリ絡んできましたね。うん、いい話だった。笑いも感動もサービスも文句なし。やっぱ好きですこのアニメ。優しいー。色味も音楽も優しいー。
 まんごつ優しいー(たまちゃん風に)。


 あと栄依子さん、おめでとう。
 自分で作った品物が売れるって、さぞかし素敵な体験でしょうね。

 ちょっと方向は違うかもですが、農家さんとか凄いですよね。料理人さんとかもね。食品加工工場の人もですね。そう考えるとみんなですよね。
 いつもいただいてます。いつもごちそうさまです。
 いつもありがとうございます。

 

 あとね、榎並先生ね、あなたは気をつけましょうね。ヒダマルだったら絶対勘違いしてますからね。