『だがしかし2』 第九話「インターネッツとスーパーボールと……」


「ココノツ、確かに俺が間違っていたみたいだ……」

 コンビニのレジに立つ紅豊さん。
 よきライバル・鹿田ココノツに対し、己の過ちを認めました。いいひと。
 コンスタントに捌けない高額ケーキ、腐っちゃったそうな。

豊「だから注文制にした」

 転んでも、ただでは起きない、紅豊。
 店頭でも電話でもインターネッツでも注文できるので、そこそこ売れているそうです。

 

インターネッツとスーパーボールと…

 

 

豊「ありあとやーーしたッ!」

 マザー2の宅配ピザ屋を彷彿とさせるご挨拶を背に、駄菓子屋へ帰るココノツ少年。

「インターネッツ……。ネッツ……」

 ハジメお姉さまとの夕飯中も、上の空なココノツ少年。もったいない。

「インター……? インター……」

 これでは、漫画を描こうにも集中できません。

「インターネッツねぇ……」

 

 あッ!?

 

 ココノツくん、閃きました。
 そう、この家にもインターネッツはあるのです。何を隠そう、大黒柱はユーチューバーですから。ヨウさんのことですが。

 

 

 

インターネッツと……

ハジメ「なるへそなぁ~。駄菓子屋店の玩具とかを、ネット通販で売るんすね」

 ノートPCをぱちぱち打ってる居候兼バイト、尾張ハジメさん。
 この画面はHTMLですね。ヒダマルもそのくらいは判別できるようになりましたが……、ハジメさん、自分で編集してます。すごい。

 ココノツの戦略を実現するために、とりあえずシカダ駄菓子屋のホームページを作ってるそうです。すごい。

 


「とりあえずお試しで」とエンターキーを押すと……、おおっ、シカダ駄菓子のサイトが出来ちゃってます! 意外な特技っ!

ハ「ハイパー・テキスト・マークアップ・ランゲージ……。くらい、義務教育っスよ!」
コ「これがかの有名なHTMLっ」

 店長も見直しましたね。よっ、新ヒロイン!

 

 さらに、

コ「おおっ、マウスの動きに合わせ、なんかキラキラしたのが付いてくるっ! あの懐かしいヤツっ!」
ハ「これがっ! Java Scriptっスよッ!?」
コ「これがあの有名なジャバスクリプト……」

 なるほど、これがあの有名な。

 じゃばくぷ、じゃが、じゃばぷくりすと……!

 

 


 ハジメさんの叩き台を基にして、HPを作り込んでいきましょう。
 まずはシカダ駄菓子の最大の売り、「駄菓子が売ってる」ことをアピールします。その結果、

 

 

         シカダ駄菓子

駄菓子が売ってるよ 駄菓子が売ってるよ 駄菓子が売ってるよ 駄菓子が売って
ってるよ 駄菓子が売ってるよ 駄菓子が売ってるよ 
菓子が売ってるよ 駄菓子が売ってるよ  駄菓子が売ってるよ 駄菓子が売っ

 

 


 お二人、大爆笑。

ハ「アピール多っ!!」
コ「文字ス~って! 延々文字横にス~って!!」

 仲良くツボってます。
 画面の右から左に、「駄菓子が売ってるよ」がずらずら流れて行くだけの画面に、大笑いしてます。


ハ「これを、更にこうして……」

 楽しくなっちゃったハジメさんがぽちぽちとキーを打つと、

 

 

 キラキラキラキラ。

 

 

 さっき出てきたじゃがぽぽりくと効果で、「駄菓子が売ってるよ」がキラキラしたエフェクトを纏いました。

コ「めっちゃ! めっっちゃ輝いてるっ!!」
ハ「駄菓子売ってることを、むやみやたらと主張してくるっ! 当たり前なのにッ!」
コ「うち駄菓子屋だからっ! シカダ駄菓子だしっ!!」

 再びの大爆笑。二人で畳を転がってます。
 こうなるともう、悪ノリは止まらない。

 

 

 ココノツの写真を撮って、HPに取り込んで、トップページに入れると、

 

ココノツ『ボクが店長(仮)です』

 

 黒い棒で目元を隠されたココノツ(ピース)が、大量に流れる「駄菓子が売ってるよ」を背景に登場しました。

 

 

 

 ハジメさんも自撮りして、HPに載せてみることにします。目線加工が面倒らしいので、目は手で隠して。

 そして、「駄菓子を宅配できること」「駄菓子屋の懐かしさ」をアピールする文章を付け加えれば、

 

 

 

    「シカダ」スタッフ
      はじめちゃん     素朴な味を…
       (20)

 

 

「手で目元を隠したハジメさん」の周りに、怪しげ(に聞こえる)な文字が浮かび上がりました。

 

 

ハ「………………や。まあね」
コ「うん」
ハ「店の宣伝をしてるだけだから」
コ「……うん」

 気まずくなっちゃうココノツ(15)とハジメさん(20)。

 

コ「あっ…、あと、玩具とか売ってる!」
ハ「そうだ、それっ!」

 ぱちぱち。

ハ「後は……。駄菓子の、宅配要素……」

 ぱちぱち。


 色々と追加した結果、「手で目元を隠したハジメさん」の周りには、

 

 

 


   ☆おもちゃも……            ☆デリバリー

              「シカダ」スタッフ
                はじめちゃん 
                 (20)

      素朴な味を……

 

 

 


ハ「やりすぎましたね……」
コ「そう、ですね……」

ハ「完全に、悪ノリでしたもんね……」
コ「……はい」

ハ「作り直しますね(ぱちぱちぱちぱちぱちぱち)」
コ「…………はい」

 

 

 

 

スーパーボールと……

コ「それじゃあ、午前中に発注していた物が届くと思うので」
ハ「? なんか頼んでたんスか?」

 朝食中のハジメさんに、用事を言付けるココノツ。これから学校です。


コ「ハジメさんが自分でやっときますよって言ってたやつですよ。……あれ。もしかして忘れてました?」

 ハジメさん、ぎくり。
 片言の棒読みで否定しますが、ぜったい忘れてました。

 

 


 ハジメさんが発注を忘れていたのは、スーパーボール。
 一面に大小色んなスーパーボールがくっついていて、壁に掛けられるやつですね。そんなにいつも売れてる商品ではないそうですが、


 がらり。


 学校帰りの小学生男子三人がやってきて、

「あれ? スーパーボール一個もねーじゃん」
「ホントだ……」
「マジかよ使えねー」

 そんな会話をしています。


「せっかく駄菓子屋再開したってのに。ダメだな」
「これじゃまたすぐ閉店だな」
「コンビニ行こうぜー」

 ぐさぐさぐさ。
 ハジメさんに言葉の刃が刺さります。劇場版で量産型に襲われた二号機みたいです。

 

 

(やばい……! このままでは、この子たちは来なくなってしまう……!! 考えろ、考えるんだ、ハジメ……ッ!!)


 自らの過ちにより、駄菓子屋の客を減らす訳には行かないハジメさん。
 瞬時に思考し、


「待つっス、君たちッ!」


 小学生を、引き留めました。

 

 

 

 

「……なにこれ?」

 ハジメさんが用意したのは、塩と水と洗濯糊。
 まさかこんなんで、スーパーボールを手作りできるというのでしょうか。


1、水に塩を入れて、良く溶かす。
2、そこに、洗濯糊を入れる。
3、好きな色の絵の具を入れて、混ぜる。
4、出来た塊を、丸める。

 

ハ「はいっ! 君専用のスーパーボールっ!」


 ホントにできたっ!?
 ハジメさんすごいっ!!

 

 

 錬金術により、子どもたちを満足させたハジメさん。ひとまず落着です。
 しかし、発注忘れは誤魔化したままです。このままでは、店長にバレます。

 

ハ「…………………………、作るか

 

 

 


 私はスーパーボールを
 作り続けた。
 ただただココノツさんにバレたく
 ないという一心で…

 不思議と充実した時間であった…
 こんなに明確に
 意志を持って何かに
 取り組んだのは
 いつ以来だろうか…

        尾張ハジメ

 

 

 

「出来たーっ!」

 無心に取り組んだ結果、洗面器いっぱいのスーパーボールが完成しました。これだけあれば大丈夫でしょう。たぶん。


「頑張ったらお腹空いちゃったー。なんか食―べよ」

 振り向いた瞬間。


 かたん、と。


 洗面器が、ひっくり返りました。

 

 

 


 がらがら。
 学校帰りのココノツとサヤ師が、駄菓子屋の扉を開けると。

サヤ「えっと……。なにこれ」
ハジメ「あ……。おかえりっス……」

 大量のスーパーボールをどんがらがっしゃんしてずっこけたハジメお姉さまが、出迎えてくれました。

 

 

 

 

あとがき。

 ハジメさんの意外な特技が明らかになりました。残念なだけではないんですね。

 それと、スーパーボールって自作できるんだ……。これは知りませんでした。泥団子なら作ってましたが。


 次回、「紋次郎いかと漫画原稿と……」。
 そういえばココノツくん、漫画家を目指してたんでしたっけ。