『だがしかし2』 第十話「紋次郎いかと漫画原稿と……」


 初めて注文します。
 私の大切な友人は、駄菓子が大好きで、
 毎日食べたいと思っているのに、
 長い入院生活で、お店まで買いに行けません。

 そんな中、
 こちらのシカダ駄菓子で宅配を始めたと知り、
 メールをさせて頂きました。

 本当にありがとうございます。
 今から友人の喜ぶ笑顔が、楽しみです。

 


 完成した、シカダ駄菓子のホームページ。
 賑やか且つ見やすい画面に仕上がってます。ハジメさん、本気を出した模様です。

 そこに、初めての宅配注文メールが届いたのですが、


ココノツ「なんて良い人なんだ……!!」


 店長代理・鹿田ココノツ・漢泣き。

 

 

紋次郎いかと……

 ハジメさんの運転する軽トラで、お届け先の病院に到着したココノツ。入院してるらしいですからね。
 っていうか、入院と言えば、多分あの人が久々に登場しますよね。


 注文メールには名前すら書かれていなかったため、イタズラかもしれないと勘ぐるハジメお姉さん。
 しかしココノツ少年は、

コ「いいんですよ。その時は、駄菓子屋に行けない入院患者がいなかったんだってことで」

 優しいっスね。

 

 

 指定の病室に着き、とりあえず入室。部屋の奥、白いカーテンの向こうには、ベッドで本を読む患者さんのシルエット。 

 あの人が、駄菓子が大好きで、毎日食べたいと思っているのに、長い入院生活で、お店まで買いに行けなくて困ってる方でしょう。

 うん、この紹介文、絶対あの人ですよね。

 

 


 ココノツが挨拶しつつ、ベッドの住人と対面すると、

「おっ」

 その人物は、顔を上げて、


ヨウ「ココノツじゃん。遅ぇっつうの~」


 出ました、ヨウさん。
 シカダ駄菓子の大黒柱。

 駄菓子屋再建に向けて動き出そうとした直後に、足の小指を折って入院した大黒柱。実はユーチューバー。

 以前、ココノツを籠絡するために紅豊さんが持ってきた、ちょっぴり助兵衛な雑誌を読んでる大黒柱。そしてユーチューバー。

 


ヨウ「早く早くぅ。駄菓子は? 駄菓子ちょうだい? 駄菓子っ」

 駄菓子ジャンキーなユーチューバーは、頼んでおいた駄菓子を要求します。……が、その前に。


ハジメ「尾張ハジメっス! お世話になってます!」

 ハジメさん、ぺこりとご挨拶。
 ヨウさんの鋭い視線は、胸元へ一直線。

 

紋次郎いかと漫画原稿と…

ヨウ「ココノツぅ……。バイトを雇って頑張っているかと思いきや、スケベ丸出しやんけ……」

 羨ましそうなユーチューバー。早く退院しようね。

 

 

 

 注文の駄菓子は、「紋次郎いか 100本入」

 ありますよね~、こういうのっ。
 子どもの頃は一本ずつ買ってたけど、大人になると3桁単位で買えるんですよね~。そしてお酒が飲めるんですよね~っ!

 大人になってこそ、真価が分かる駄菓子ではないでしょうか。


 ちなみに、紋次郎いかが串で売ってる理由は「木枯し紋次郎」が竹串を咥えていたのが由来だそうです。

 流石に古すぎて知らん……。
 ヒダマルには関わりあいのねえことでござんす。

 

 

 

 紋次郎いかに大喜びしてる父の元気な姿に、ひとまず安心。釘を刺した後、お暇しましょう。

コ「じゃあもう帰るけど、次からは普通に注文してよね」
「普通に? 注文?」
コ「手数料合わせて、2,500円ちょうだい?」
ヨ「えぇっ! 金とんのぉ……っ!?」

 取るでしょうよ。


コ「当たり前だろ宅配なんだからっ」
ヨ「……たくはい? これお見舞いじゃ? てかウチ、宅配なんてやってたっけ……?」

 えーと。
 なんだか、話が噛み合いません。
 てっきり、宅配サービス開始を知ったヨウさんが、悪ふざけであんなメールを寄こしたのだとばっかり。

 

 これは、本当に、駄菓子の到着を待つ病人がいるのでは……!?


 ……という方向に話が進むと思いきや、やっとココノツが駄菓子屋を受け継ぐ決意をしたって話になりました。いいのか。

 しかしココノツは、漫画家になる夢を諦めた訳ではありません。駄菓子屋は駄菓子屋で頑張りながら、漫画もちゃんと描き続けていると大口叩きましたが、

 


コ「ぜんぜん描いてない……」

 その夜、下書きも終わっていない漫画原稿を前に、ひとり呟くのでした。

 

 

 

漫画原稿と……

 豊さんのビニコンで「少年マンデー」を買い、さっそくチェックするココノツ。連載中の『あやしかし』が家に帰るまで待てないのではなく、

コ(あった……!)


(各地方の出張漫画審査会イベント……!!)


 夢に向けて、動き出していたのです。

 

 

 


 審査会は、次の日曜日。
 今日は、直近の金曜日。

 リミットは、三日後。


            明後日
           日曜
             審査会!!


 気合を込めた張り紙を掲げ、漫画に取り掛かるココノツ少年。
このページ数なら、二日あれば出来なくないはずだ」との見通しですが……、創作って、

 創作ってね……

 

 

 

 

 土曜日。

 5:48。


(くっ……。かなりヤバいな……。始めの時間配分からズレてきてる……!)


 こだわろうと思えば、いくらでもこだわれますからね。
 全てが己の匙加減。しかも審査を受けるとなれば、知らず肩ひじ張ろうというもの。そもそも技術が足りません。

 初心者が正確な時間配分なんか、出来るはずないのです。

 

 

 

 同日。

 16:24。


(予定ではもっと早いペースで仕上げられると思ってたのに……)

 


(こんなの到底、間に合う訳ない……)

 


 残された作業量に、愕然とするココノツ。
 睡眠時間と移動時間を含めれば、もうほとんど時間は残されていません。

 


(どうしてコツコツ描いてこなかったんだろう)

 

(ダメだ。今回はもう諦めて、)

 

 


「店長~? お友達が来てますよ?」

 今日も呑気なハジメさんがやってきました。

「あれ? 店長それって……、漫が

 

「ななな何でもないですッ!! これは遊びというかッ!!」

 

 全力で誤魔化すココノツ。
 こういうのって、どうして恥ずかしいんですかね。

 


 しかし、こんな時だけ高性能なハジメさん、「明後日 日曜 審査会!!」の張り紙を発見します。
 漫画を審査会に出す予定を知るや、


「マジっスかぁ!!」


「店長っ、本当に漫画家になるんスかぁっ!? 言ってくださいよぉ~! 審査会、頑張ってくださいね! 自分、応援してるんでっ!!」


 めっちゃ応援してくれました。嬉しい。

 

 


 けれど、肝心の原稿が、全然終わっていないのです。今回は見送ろうかと考えていたココノツですが、またもや、


「大丈夫ですッ!!」

 

「明日の朝までに完成させましょうッ!!」

 

 めっちゃ張り切ってくれました。どうした。

 

 

 

「話は聞いたぜぇ?」
「ココノツっ、あたしで良ければ手伝うよっ!?」

 遠藤兄妹の力も借りて、みんなで漫画を仕上げることに。
 なんて心強い味方だ……! 友情って素晴らしい……!!


サ「とは言っても、あたしコーヒー淹れるくらいしか出来ないけど」
豆「じゃあ俺は……、横でゲームしながら実況してあげるねッ!?

 ただし豆、テメーは駄目だ。

 

 

 二人に話を通してくれたハジメさんは、背景全般を担うそうです。この人のポテンシャル、実はかなりスゴイですよね?

コ「あの……。ハジメさんて、もしかして漫画……」

 ココノツがそう勘ぐるのも、無理からぬこと。それほどの情熱です。それほどの技術です(たぶん)。
 しかして、問われた彼女は。

 

 

「自分は、シカダ駄菓子のバイトです」

 

 


「上司が困ってるなら……、」

 

 


「部下は、手伝いますよっ」

 

 

 

あとがき。

 これはココノツも感づいていたみたいですが、「謎の注文メールは、ほたるさんが、入院中のヨウに向けて駄菓子を贈ったものではないか」という説。

 最終回も間近となり、来週あたり彼女がまた出て来そうですし。ラストスパートかけてくる様子ですよ、『だがしかし2』。

 

 そして、俄かに動き出したココノツの漫画道。
 ここまで真面目な感じで漫画を取り上げるとは……。というか、ココノツは「駄菓子漫画」描けばいいのに。

 ラスト、ハジメさんの決め台詞もカッコよかった。あれは惚れる。「惚れてまうやろー」って叫ぶ。

 

 次回、「ホームランバー当たり棒と雪と……」。
 彼女、来たるかッ!?