『ラーメン大好き小泉さん』 第十二話「名古屋」「再会」


「コメノ珈琲店」でお茶する潤と美沙の元に、悠から電話がかかってきました。彼女は今日、大阪の従姉妹に会って引越しの手伝いをしているはずです。
 ところが。

悠『助けて~~、潤~!』
潤「え? なに、どうしたの? 怖いんだけど……?

 のび太君みたいな泣き声が聞こえます。
 潤さん、これはなんかメンドいことに巻き込まれそうだと察しました。

 

 

悠『あのね……。今、名古屋にいるんだけど……』

 

『迷子になっちゃったぁ~~!!』

 

潤「………………………は?」

 

 

名古屋

 名古屋の、これはなんだろう、「ラーメンの巨神像」みたいなオブジェの前で泣いている悠。
 どうしたことか。

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〈公式サイトより引用〉Ⓒ鳴見なる・竹書房/「ラーメン大好き小泉さん」製作委員会

 

 

潤『あの、悠? 意味分かんないんだけど? 名古屋って? 大阪行ってたんでしょ?』

 委員長で眼鏡な潤さん、視聴者の疑問をまんま代弁してくれます。流石。 

 


 大澤悠の言うことにゃ。

1、さっきまでお兄ちゃん達と新幹線に乗っていて、東京に帰る途中だった。
2、名古屋駅手前で、車窓から「小泉さんらしき人影」が見えた。
3、気付いたら、名古屋の地に降り立ってた。
4、お兄ちゃん達は寝ていて、連絡が取れない。荷物も持たず降りたので、手持ち500円しかない。どうしよう。

 小泉さんへの反応が病的ですね。
 電話口の潤さん、ただただ引いてます。

 

 

美沙『あっはははっ、悠バカすぎー! そんなん絶対人違いじゃん!』

 美沙が笑い飛ばしてくれるのが救いですが、


「小泉さんはいたよ? 小泉さんを見間違えるはずがない」


潤『急にマジ声やめい』

 狂気を覗かせる悠です。怖い。

 

 

 しかしまぁ、友の窮状をほっとく二人ではありません。

潤『一応、小泉さんに連絡してみようか? ほんとに名古屋にいるのか怪しいけど……』
美『じゃあ美沙はメールしてみよっとー。悠のメアド、小泉に教えちゃって良いよね?』

 小泉さんが名古屋にいるとしたら、頼れそうですからね。まずはその点を確認しようと、小泉さんとのコンタクトを図ってくれました。
 ものの、


悠「……え?」


(あれ? なんで二人とも私の知らない小泉さんの連絡先知ってるの?)


 衝撃の事実、発覚。

 

 

 


 小泉さんの影を求め、名古屋駅周辺を彷徨う悠。
 歩いてるうちに、お腹が鳴りました。でもワンコインしか持ってません。ここから何とかして東京に帰るとか、若手芸人のチャレンジ企画みたいです。


 しかし、腹が減ってはなんとやら。
 500円でも入れそうな、「sugakiya」というラーメン屋? ファミレス? に訪れましたが、うん? この名前、どこかで見たような……


 あっ!


 富山ブラック!

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 ヒダマルが食べてみた、富山のご当地インスタントラーメン! このメーカーとと名前が一緒ですよ。ご縁があるなぁ。

 

www.hidamaruanime.com

 

 

 

 悠のチョイスは、「卵入りラーメン」。

 ラーメンの真ん中に、緩めの卵が乗っかってます。トロォ~と流れ出てくるやつです。美味しそう。
 早速に頂こうとするも、

(なにこれっ!?)

 (レンゲ……、じゃないぞ……? これは一体……)

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〈公式サイトより引用〉Ⓒ鳴見なる・竹書房/「ラーメン大好き小泉さん」製作委員会

 

 スプーンとフォークが合体した印象ですね。苺を食べる時の、みたいな。
 周囲を見渡すと、この不思議スプーンで麺を食べてる人もいれば、普通にお箸で啜っている方もいます。


(どっちが正解……!?)


 悠が、食文化の違いに頭を悩ませていると。

「別に」

 隣のテーブルに、座りました。

「好きなように食べればいいと思います」

 そう、彼女が。
 ラーメンを持って。


「ちなみに私は、半分を箸で食べて、卵を潰すタイミングで、ラーメンフォークに切り替える派です。卵が溶け込んだスープと一緒に麺が啜れるので。新デザインになってから、一層使いやすくなった気がします。この、世界が認める造形美……(実はニューヨーク近代美術館収蔵品)」

 今日も今日とて、ラーメンを熱く語るのは、


悠「小泉さん……! 助けに来てくれたんだねっ!?」


 救世主の登場に沸く悠。
 けれど彼女は、潤の連絡を聞いてやってきたのではなく、

小「連絡? ……あ、着信とメールが」
悠「ホントにたまたまっ!?」

 またまた、照れちゃって。
 ワザとでなければ、アナタが悠の隣に座る訳ないでしょう。


 小泉さんと一緒に食べた「卵ラーメン」は、なんだか安心できる味でした。

 

 

 

 ところで。
 昨日、大阪から東京に帰ったはずの小泉さんが、どうして名古屋にいるかというと。

1、帰りの新幹線の中で、読んでいた雑誌に「台湾まぜそば」が載っていた。「あ、名古屋……」
2、気がついたら、名古屋の台湾ラーメン発祥の店にいた。「辛旨満足。ニラとひき肉がポイント……」

 悠と変わんねぇ。

 

 ちなみに台湾ラーメンとは、

「台湾人の店主が作った、名古屋のご当地麺です。台湾には存在しません。ちなみに、私は辛み少なめの、「台湾ラーメン・アメリカン」を注文しました」

 どんどん無国籍になってく……
 いや、ワールドワイドと呼びましょう。

 

 

 

 小泉さんにお金を借りて、一緒に台湾ラーメンを食べることになりました。困った時は、お世話になるっきゃない。
 辛そうな一杯を、ひとつ啜れば、

(めっちゃホット……ッ!!)
(けど、それがイイ……ッ!!)

 感想がシンクロしました。

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〈公式サイトより引用〉Ⓒ鳴見なる・竹書房/「ラーメン大好き小泉さん」製作委員会

 

 

 

 東京へ帰るため、駅に戻った悠と小泉さん。

小「行き当たりばったりで途中下車なんて、あなたらしいです。まったく何を考えているのやら……」


悠「……そんなの、」

 何を考えているか、と問われれば。


「そんなの……」

 ひとつしかありません。
 なぜなら、彼女は、

 

「ラーメンに夢中な小泉さんに、夢中だからだよっ」

 

 ラーメン大好き小泉さん大好き大澤さん。

 

 

悠「あたし、初めてそういうの見つけたから……。だから、あの……。もうちょっと、仲良く出来たらな~と……」
小「じき発車です(すたすた)」

 思い切って気持ちを伝えたのに、やっぱり連れない小泉さん。新幹線も隣に座れるかどうか怪しいものです。自由席なのに。

 

 

 悠が肩を落としていると、


 ピロリンッ♪


 新規メール1件
     koizumi@…

 

 これはッ!?

(このアドレスって……!!!!)

 そういえば、美沙が、「悠のアドレス、小泉に教えちゃって良いよね?」とか言ってたような……!?

(まさか……! まさかぁ……ッ!!)

 動悸を抑え、震える指先で、そのアドレスをタップすると、

 

 

 

差出人:koizumi@…
件名:(無題)

  嫌です。

 

 


(小泉さんからの、初メーールッ!!)

(ついに……! ついに私たち……ッ!!)


(メル友にーーーーーッ!!!!)


 感激する悠です。
 メールの内容なんぞどうでもいいのか。

 


 と、

(お兄ちゃんから大量の着信履歴ッ!? 忘れてたッ!!)

 

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〈公式サイトより引用〉Ⓒ鳴見なる・竹書房/「ラーメン大好き小泉さん」製作委員会

 

修「何してた……?」
悠「ラーメンたべてた……」

 こってり絞られた悠でしたとさ。

 

 

 

再会

 秋も深まる、ある日。

 小泉さんは、風邪を引きました。


 心配した悠が看病を申し出るものの、「結構です」の一点張り。
 うん、弱った状態で部屋に悠なんか呼んだら、どんな沙汰になるか……。賢明な判断でしょう。や、ただ鬱陶しいだけか。

 


 次の日から。
 小泉さんは、学校を休みました。

 担任の先生に「小泉さんの住所教えてっ!」と詰め寄ったり、《大丈夫?》《心配だよお》《お見舞い行くよ!》《ラーメン作ってあげるから》と鬱陶しい文言を連投したりと、かなり迷走する大澤悠。

 

 美沙と潤が優しく諭すも、

悠「ご飯どうしてるんだろうっ!? 誰か近くにいるのっ!? ひとりで倒れてたらどうしようっ!?」

「小泉さぁんっ!! もっと私を頼ってくれていいんだよぉ~~ッ!?」


 美沙、潤。
 お疲れ。

 

 

 

 

 しばらく学校を休んだ小泉さんが、二週間ぶりに登校してきた、その放課後。

 悠は大喜びで一緒に帰る……、かと思いきや。
 神妙な顔つきで、彼女の背中を見送るのみでした。


美「あれ? 悠、小泉と帰んないの?」
潤「久々に会えたのに……。いいの?」

 悠の生態を熟知している友人は、むしろ彼女をこそ心配します。明らかに様子がおかしいというか、元気がありませんからね。


悠「今日は……。いいんだ……」

 

「小泉さんね……、風邪引いてから、回復した今朝まで、ほとんど何も食べてなかったんだって」


「つまり、今日は……。小泉さんにとって……」

 

「二週間ぶりの、ラーメンとの再会……」

 

 

 

 


 ことり。

 目の前に置かれた、一杯のラーメンを、無心で見つめる女子高生。
 割りばしを取り、「いただきます」と感謝を込める、金髪の女子高生。


 スープを一口、喉に通して、

 湯気の向こうの麺を挟み、口元へ、


 啜ると。

 

 彼女の瞳に、淡い煌きが宿りました。

 

 


 麺と、スープと、チャーシューと。

 丼の中に構築された、珠玉の世界を味わいつくすうち、いつしか彼女の頬には、涙が流れていました。


 涙のしずくが落ちた丼を、抱え上げて、息が切れるまで、スープを飲み続けます。口を離した彼女は、

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〈公式サイトより引用〉Ⓒ鳴見なる・竹書房/「ラーメン大好き小泉さん」製作委員会


 流れる涙は、そのままに。

 あふれ出る感情を、噛み締めて。

 

 至福の極致のひと時を、味わい尽くしました。

 

 

 

 


 ラーメン屋を出た彼女の背中を、こっそりと見届ける者が。

悠「良かった……!! 小泉さん完全回復……!!」

美&潤「結局ついて来てるし……」

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〈公式サイトより引用〉Ⓒ鳴見なる・竹書房/「ラーメン大好き小泉さん」製作委員会

 

悠(これからもっ、ラーメン大好きな小泉さんを追いかけるからねっ!!)

 

 はた迷惑な誓いを立てつつ、小泉さんに声をかける悠。
 それを追う、美沙と潤。


「この後、もう一軒行くんでしょっ? 私も一緒に行ってもいいっ?」
「もう、結局ついてってるじゃん」
「でも私も、ラーメン食べたくなって来ちゃった。一緒に行っていいかな?」
「つるんで食べるのは好きではありませんが……」

「どうしてもラーメンが食べたいのなら、お好きなように」

 

 


 秋の空は広く、高く。


「じゃあこれから毎日一緒に食べに行こー!」
「お断りします」


 ラーメンが大好きな女子高生と、そんな彼女が大好きな女子高生と、眼鏡とツインテールの声が、どこまでも響いていました。

 

 

 よいラーメンを……

 

 

 

 

あとがき。

 終わった……。
 また、ひとつのアニメが、最終回を迎えました……。3ヶ月ごとにセンチメンタルになっちゃう、それがアニオタの宿命です。

 終わらぬアニメはなくて。
 そして、新しい季節には、新しい出会いが待っています。

 ありがとう、ラーメン。
 ありがとう、小泉さん。

 

 ところで、度重なるストーカー行為で散々視聴者をドン引かせていた悠ですが、この最終回では小泉さんの狂気が見れます。引きます。

 二週間ぶりのラーメンとの再会の様子は、ヒダマルの文章力では描写しきれませんでした。彼女、大分ヤバい表情してましたし。

 

 


 うむ、では。

 このアニメを〆るには、この一言しかないでしょう。


 よければ皆さん、お手を拝借。

 せ~の、

 

 ごちそうさまでした!