『宇宙戦艦ティラミス』 第二話「MY CUTE PUPPY/DO NOT DISTURB」


 全機、帰還確認……

 戦闘警戒レベルを5へ移行……


(オレは、コックピットが好きだ……。ここは、オレの聖域だ……)


 パーソナルスペースを確保できる空間がここにしかないエースぼっちパイロット、スバル・イチノセ少尉。
「聖域」って言葉を気に入っちゃってるあたり、若干の中二感すらうかがえますね。こじらせかけてますね。

 

 

MY CUTE PUPPY

「おい優等生!」
「ヴォルガさん……?」

 戦闘を終え、宇宙戦艦ティラミスに帰って来たパイロットたち。
 そんな中、先輩で兄貴な感じのちょっと距離感が近くてやたら絡んでくる微妙に鬱陶しい相手、ヴォルガー・ハマー中尉(スバルの個人的見解です)が話しかけてきました。

 悪い人じゃないんですが、「あんまりエース面して突っ込みすぎるなって」って言いつつ馴れ馴れしく肩を組んできました。そういうトコだよハマーさん。

 


「……? お前動物みたいな臭いしてんな。男ばかりとは言え、マナーっつうもんがあるからな?」
「余計なお世話ですよっ」

 


(あぁ、うるさい……。この戦艦にいるといつもイライラする……)


 ハマーさんの腕を振りほどき、艦長室へ向かうスバル青年。
 悪い人じゃないんだけどなぁ、お互いに。

 

 

 

 

 

 

「ならんぞ。スバル少尉」

 

 薄暗い艦長室。

 高い位置からスバルを見下ろしつつ、厳格な声で室内を震わせる老人こそ、宇宙戦艦ティラミスの艦長・「ヴェンチュリー・ルロワ」です。


艦長「貴様を軍規違反者にしたくはない……」
ス「しかしっ、ヴェンチュリー艦長っ!」
艦「ならんと言っておろうが。ティラミス艦内で犬を飼うことは許さん!

 

 そう告げられたスバルの腕の中には、白くてちっちゃくて黒目がクリってしてて「ハッハッハッハッ、アウッ!」って言ってる一匹のワンちゃんが。

 


 宇宙チワワが。


 そう。

 スバル青年は、戦場だというのについ、子犬を拾ってきてしまったのです。チワワのうるうるお目めに心奪われちゃったのです。

 

 

貴様は知らんだろうが、宇宙チワワは有酸素下に連れ出すと、信じられない速度で成長する。恐ろしい大食で、すべてを食い尽くす危険な犬なのだ……!

 スバルを説得するため、宇宙チワワの恐ろしさを説明する艦長さん。


「しかしっ、チビはこの通りおとなしい性格でっ、」

 名前つけちゃってました。
 既に名前つけちゃってましたよ。
 もうこうなると離れられないパターンですよ。あーあー。

 

 

 

 

 艦長を説得することは出来ず、宇宙チワワを直ちにもといた場所へ戻してくるよう命令を受けたスバル。

 要するに「ねぇお母さんこの子飼ってもいいでしょー!?」「なに言ってるの! ウチにそんな余裕ないわよ! 面倒見るのだって大変なんだから!」っていうやりとりですね。

 そして「捨てて来なさい!」って追い出されちゃった訳ですね。せつない。

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 〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉


 チビを抱え、イライラしながら艦内を歩くスバル少尉。

 でもコレ、既にちょっと大きくなっちゃってませんかね? チワワってこんなだっけ?

「お前も、こんな艦内にいたくないよな……、どこか居心地のいい……ハッ!?」

 


「コックピットで飼えばいいじゃないか……!!」

 


 そう、彼の聖域・コックピット内部なら、他人に邪魔されることなくチビと戯れることができます!

 

 

 

 ナイスアイディ~アを思いついたスバルは、すぐさま専用機「デュランダル」へ。

「今日からあのデュランダルがお前の家だぞー、チビ」
「バウッ!」

 ……なんか、


 チビ、でっかくなってる。


 チビ、急激にでっかくなってる。
 もう頭がビーチボールくらいある。身体はクマじみてきてる。

 え? これチワワじゃなかったっけ?

 

  

「ここはなぁ、冷暖房完備で快適だぞ~?」

 愛犬の変化に気付いているのかいないのか、己より巨大なチビを抱えてコックピットに入れるスバル。

 


「ホラ、昼に食べたちぎりパ、ン……」

 あ、気付いた。
 既に陸上最強生物みたいに成長しちゃって鋭い犬歯からよだれを垂らしつつコックピット狭しと唸りを上げてるチビに気付きました。

 あ、またおっきくなった。


(ダメだ……! もうオレの座れるスペースが、ない……ッ!!)

 

 


 更なる成長を遂げようとするチビを押し込み、デュランダルを緊急出撃させます。艦長の言ってたことがようやく理解できましたね。

 うん、これじゃ飼えん。

 

 

 

 成長を続けるチビに圧迫されながら、どうにか元いた場所まで連れて来ました。

「ごめんよ……」

 もはやデュランダルより巨大になった宇宙チワワ・チビをみかんの空き箱(デケェ)に入れて、宇宙へ帰したスバル。

 


「そんな目でオレを見るなよ……。頼むよチビ……!」

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 〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉

 

 うるうるな瞳に後ろ髪を引かれながら、機体を発進させます。

 チビは唸りながらデュランダルに腕を伸ばしますが、コレは引き留めようとしてるのかなぁ。


 お腹空いてたんじゃないのかなぁ……。

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 〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉

 

 

DO NOT DISTURB

「あんなに大きくなるなんて、オレ知らなかったんです……」

 愛別離苦の悲しみも癒えぬまま、スバルは次の作戦に使う新兵器・「D-フォトンランチャー」のメカニックからレクチャーを受けていました。

 

生き物てだいたいそーゆーモンやて。アタシの子どもも昔ポッケにダンゴムシぎょ~さん入れとったわ

 適当なのか年の功なのかよく分からんアドバイスをしてくる彼女こそ、「ホンダ・シゲルコ中尉」
 ティラミスの兵器全般の整備を任される凄腕メカニックなのですが……、見た目「給食のおばちゃん」です岐阜出身です。

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 〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉


 ハマー中尉とは別の方向で面倒見良さそうですね。

 しかし、コミュ障ぼっちにとって、おばちゃんは比較的接しやすい相手。こっちが喋んなくてもどんどん会話が進んで行きますから。がんばれスバルくん。

 

 

 レクチャーの間、スバルにもしものことがあったら母が悲しむだろうと何気なく口にしたシゲルコさん。

 けれど、

「ウチも地球にあんたくらいの子おるけど――」
「あの。シゲルコ・ホンダさん、でしたっけ……」
「シゲコでええよ」
「シゲコさん……。オレの母親はもう、この世にはいないんですよ……
「え」


 そう、スバルの母は、二度目のアースアタックの際に巻き込まれ、命を落としているのです。

「オレ、小さかったから覚えてないんですけどね……」
「そりゃあんた、気の毒したねぇ……」
「すみません、余計な話でした」

 そう言い残し、コックピットから去ったスバル。

 


「これっ! 大事なやつーっ! …………、」

 ヘルメットを残して行ったスバルを見届けて、心配そうな表情を浮かべるシゲルコ中尉。
 彼女にも同じ年頃の子がいるそうですし、スバルの置かれている状況は察するにあまりあるのでしょう……。

 

 

 

 

 


 翌日。

『スバル、チャンスは一度だけだ』

 オペレーターのコーディさんの声を耳に入れながら、スバルはコックピット内で集中を高めていました。


『奴らはここに野戦陣地を建設中だ。お前があの管制塔を打ち抜いた直後、ヴォルガー隊が一気に攻め込む。これは、デュランダルとお前にしか……、スバル。聞いてるのか』

 集中、を……?


 なんでしょう、今日のスバルは元気がありません。
 彼の聖域であるコックピットに座っているというのに、なんか青い顔してます。

『おいスバルッ! これは失敗の許されな
「コーディさんッ。ちょっと確認したいんですが……ッ?」
『なんだ』

 

 

 静かに声を荒げるスバル。

 彼の周りには、お花を活けた花瓶やら、お人形さんやら、写真立てやら、「無臭空間」やら、ちり~んと音を立てる鈴つきの「交通安全お守り」(窓に吸盤で張り付けるタイプ)やら、とかくレースやら花柄やらが散乱していて、


「色々とコックピットの中が変わりすぎていて、まったく集中できないんですけど……ッ! これ、」


「ぜっっったいシゲコさんですよねッ!?」


 シゲコさん、母性を爆発させちゃったみたいです。

 

 

『いや、俺は見てないから知らんが。そんなことよりD-フォトンランチャーに集中してくれ』
「無理ですよッ!! 勝手に掃除された挙句、ヘルメットに名前まで書かれてるんですよッ!?」

 あいたたたたた。

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 〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉

 

 

(勝手に……? まさかッ!!

 嫌な予感に襲われつつ、座席下の収納を開けるスバル。
 そこには、

 

「隠しておいたDVDが、ジャンル分けして整理されてるッ!?」

 

 

「あぁのババアァァァーーーーッ!!」

 

 

「コックピットはオレの聖域だと言ってるだろうがッ!!」

 

「シイィ~ゲエェ~コォォ~………ッ!!!!」

 


 いらんこと母性を炸裂させたシゲコへの怨念を込めて、超兵器D-フォトンランチャーのトリガーを引くスバル・イチノセ。

 

 


 ……宇宙歴156年。

 スバルは動揺のあまり、狙撃し損ねた…………。


 そしてティラミス帰還後、シゲコとはしばらく口を利かなかった……。

 

 

 

あとがき。

 心優しきスバルの若気の至り、そして新キャラ・シゲコさんによる母性が爆発した第二話でした。

 

 年の離れたスバルを息子のように感じる親心は分かりますが、しかしねシゲコさん、そりゃ鬱陶しいぜ💛

 ヒダマルがスーパーに行くと若いヒトを避けるようにレジを選びますが(というか若い女性が苦手なんですが)、おばちゃんに深入りするとこういったことも起こり得るんですね。

 

 そういえば、スーパーのレジ打ちにおじちゃんっていませんよね。

 なんでだろ。