ホラー小説を発表してみる。その①『ぬっへへふっふ』


 みなさま、こんにちは。
 リビングにまだ炬燵が出ているヒダマルです。

 夜とか意外と寒かったりしません? 天気のいい日に干して片付けようと思っても「昨日使ったしなぁ……」って思うとタイミングが分からない。

 みなさんいつ頃しまってるんだろう……?

 

 

小説の方は。

 ヒダマルが小説を書く、という事実は、わりと初期の頃から公表していました。

 はてなブログのプロフィール欄、趣味の部分には「こっそりと小説も書いてたり」とついでのように記しています。
 詳細なプロフィールを記事にした際にも、小説遍歴について軽く触れています。

 


 ただ、それ以外の部分では、あんまり話題に挙げてないんですよね。

小説どうこう言ってるけど、コイツはほんとに書いてるのか?」と思われてるかも。いやまぁ、最近はあんまり書いてないんですけど。

 


 なので、フォルダで腐らせとくのもなんだし、前にネットに上げたのをちょっくら発表してみようかなぁ、とか。なんて。思ったり。しちゃったり。

 たぶん、当時より多くの方に読んでもらえそうだしなぁ、とか。考えたり。してみたり。ラジバンダリ。

 

 

 まぁ、なかなか……、勇気がいるというか。

 例えばド下手なお絵描きなんかだと、あまり抵抗なく発表できるんですよ。というのも、ヒダマルは絵が上手くなりたいだけであって、絵のプロになりたい訳ではないので。
「初心者のお遊びだからご愛嬌」というフィールドが成り立つ訳です。作者も読者も、お互いに。

 

 ただ、小説は……。小説の方は。

 とりあえず、紙の本の出版はほぼほぼ見限っているので、どこからが「小説のプロ」と言えるのか、とゆーのは曖昧だと思うのですが……。

 小説の方はね。

 

 

作品概要。

 upppi(ウッピー)というサイトがありまして。

 小説、漫画、イラストが誰でも投稿出来て、誰でも閲覧できるという場所です。活字よりのpixivみたいな?

 作品の傾向を見るに、女性の利用者が多い印象があります。

 

upppi.com

 


 そのウッピーさんにて、2015年に「ショートホラーコンテスト」というコンペがありましてですね、そこに応募した作品です。
 応募総数225作品の中から、見事一次選考で落ちた作品です。優勝すると賞金3万円だったかな? 欲しかったなぁ。

 利用規約を読むに著作権はヒダマルに属するみたいなので(そりゃそうだ)、ここで紹介しても大丈夫みたい。

 2000字くらいなので、さらっと読めます。

 

 

 

「ホラー」と銘打ってはいるものの、そんなに怖くないです。というか、まったく怖くないです。そもそもヒダマル、ホラーの定義が分かりませんし(なぜ書こうと思った)

そんなこと言って実は激怖なんでしょ? ヒダマルの手口はもうお見通しだぜ」と考えたそこのアナタ、そこの鍛えられた読者様。今回ばかりはホントですって(信用がない自覚はある)

 人を怖がらせるとかね、ヒダマルにそんな技量ないですから。まして三年前の作品ですからね。時の流れって怖いね。これぞホラーなんつってね。

 

 

 

 ……はぁ、照れ隠しもこの辺にしときましょうか。

 

 常軌を逸したレベルでヒマなので何でもいいから小説を読まないと脳が強制終了しそうという四面楚歌な方は読んでも良いですが、まぁ止めはしませんが、とりあえず一人で五文字しりとりをやってみた方がより有意義な時間を過ごせる可能性が高いことは断言しておきます。

 

 では、どうぞ。

 

 

 

 

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ぬっへへふっふ


 聞こえてきたのは夕方だった。

 

 ツクツクホウシの熱狂は間断というものを知らず、このまま永遠に夏が続くのではと懸念させる勢いで地表を満たしている、そんな時節である。本の返却期限が過ぎているのに気がついて、市立図書館へ返しに行くためまともな服に着替えている途中、西日と共におれの部屋に飛び込んできたのだ。

 

 ぬっへへふっふ。

 

 その声は誰かが拡声器越しに喋ったような、人工的な響きを伴っていた。あるいはトラックが路地を曲がる際の電子音声。距離があるためか元の文章が判別できないが、まさか実際にぬっへへふっふと言っていた訳でもないだろう。妙なイントネーションがあり、何事かを伝えるための音なのは間違いなさそうだった。

 夏だ夏だと隆盛を極める蝉時雨に混じって、また聞こえた。

 

 ぬっへへふっふ。

 

 町内放送だろうか。やたら早口に喋るもので反響が酷く、内容の聞き取れない放送はたまに耳にする。大抵は爺さんの声である。あれは誰かが指摘してやらないんだろうか。おれが指摘するつもりもないが。

 

 ぬっへへふっふ。

 

 おや、と思う。さっきと位置が違う。おれのアパートの裏には窓と並行して坂道があり、それを登ると住宅街に通じる。音はどうやら坂の下から上に向かって動いたようだった。下手な町内放送という線は消えた。網戸も開けて首を出してみる。耳を澄ます。いつもの豆腐屋の車かとも考えるがどうも様子が違う。坂を登りきったのか音源は見えなかった。住宅街を回るのだろうか。

 

 ぬっへへふっふ。

 

 本をうっちゃり、おれは音の正体を確かめることにした。読書家の根本とは得てして野次馬根性、元来から興味本位の塊である。なに、本はそもそも返却期限を過ぎているのだし、返却ボックスに入れておけば職員と顔を合わせて気まずい思いをすることもない。向こうも無駄なお叱りの必要がない分助かるだろう。こうなると、善は急げだ。

 

 ぬっへへふっふ。

 

 音が呼んでいる。また移動している。正体を確かめないことには夜も昼も明けない気がして、おれは玄関をまろび出た。裏に回り、坂を登る。部屋の窓が見える。窓もカーテンも閉め忘れたので室内は丸見えだったが、またあの音が聞こえたので防犯意識よりも知的好奇心が勝った。鍵は閉めたと思う。

 歩きながら推理する。やはり、大型車両の注意喚起音が近いように思う。あの謎のお姉さんの声に。バックします、バックします、ぬっへへふっふ。右に曲がります、ご注意ください、ぬっへへふっふ。無理があるか。しかしご注意するべきなのは本来運転手であるはずなのだが、あのふてぶてしい態度は誰も気にならないんだろうか。おれも気にしていないが。

 右に曲がります、が、風の加減で例の音に聞こえるのかもしれない。もしくは蝉の加減で? 坂を登りきる間に、さらに二回聞こえた。予想通り住宅街の方からだった。汗を拭う。

 

 ぬっへへふっふ。

 

 なんと言っているのだろう。いよいよ突き止めなくては気が済まなくなってきた。イントネーションが似ている言葉を当てはめてみる。やっぱりコップ。さっぱりモップ。うっかり発布。まてよ、破けて切符? 煤けてムック。違うか。しかし近付いているはずだ。最後にもう一音足りない気もする。

 移動しているところを見るに誰かが意図的に発していることは間違いないのだが、その目的がわからない。町中を移動する音声といえば、火の用心、さおだけ屋。焼き芋は時期外れだ。選挙もやってなかったと思う。移動販売のパン屋が手を広げて来たという線は? あり得そうだ。

 

 ぬっへへふっふ。

 

 開けっ放しの窓が気になる。まさかこれが狙いだったのかとも邪推する。好奇心旺盛な住人を外に誘き出しておいて、その隙に空き巣に入る算段なのかもしれない。飛躍しすぎだろうか、と考えつつ音を追いかける。喉が渇いてきた。

 

 ぬっへへふっふい。

 

 角の向こうでまた聞こえた。あそこは駐車場だ。車を止めたのだ。しめた、と思い足を速める。角を曲がると、はたして駐車場はがらんどうだったので少々拍子抜けしてしまう。車は一台も停まっていない。

 見回してみたところ、駐車場の一角、植込みの隅に拡声器が転がっていた。近寄ってよく見ると、ずいぶん使い込まれている。これを使っていた何者かがここに置いて去ったのだ。がっかりした。結局、誰が何のために行っていたのか判らず仕舞いだ。あるいはここで待っていれば犯人が現れるかもしれないが、どうだろう。

 暑い。窓を閉めないといけない。おれの中の防犯意識が失地回復に努めている。迷った末、いよいよ匙を投げる。冒険は終わりだ、現実を見よう。図書館もまだ開いている時間だ、お叱りを免れる方法はないかと悩みつつ踵を返すと、背後で声がした。

 

 ぬっへてふっふい。

 

 汗が冷えた。拡声器の音ではなかった。生身の人間の声で喋った。誰が。
 振り向くほどの好奇心はなかった。この場合は度胸か。いや。帰らなければいけない。おれは帰って窓を、カーテンを閉めなければいけない。

 

 ぬっけてふっふぁい。

 

 耳元で声が聞こえた直後、おれは両足首と右腕を掴まれた。