みなさま、こんにちは。
今年が閏年だと知ったヒダマルです。
オリンピックがある年は閏年なんですっけね。2月29日生まれの人は4年で1歳しか歳を取らないんですよね。という不具合を解消するために「歳を取るのは誕生日の前日ってことにしようぜ」って決めたから学年で最も年下な人間は4月1日生まれの人なんだよって西尾維新先生の『ランドルト環エアロゾル』に書いてあったけどほんとなんでしょうかね。20歳の誕生日の前日にもうお酒飲めるってこと?
眉唾を眉唾なままにして生きていくのでチコちゃんに叱られます。
今回の「ここだけの話」は。
かくもボーッと生きているヒダマルが、以前遭遇した奇妙な出来事について、語ってみようと思います。
当時まだ保育士さんとして社会人していたヒダマルが、ていうかまだヒダマルなんてケッタイな名前を名乗っていなかったヒダマルが道を歩いていると、背後からとっとっとっ、誰かが走ってくる足音がしました。
高校生くらいでしょうか、小走りの女の子が、ヒダマルを追い抜いていきます。電車に遅れそうなのか、早く会いたい誰かがいるのか、微笑ましいものです。
と。
かちんっ
という軽い音がして、彼女が去った歩道の上で、何かが跳ねたように見えました。
近寄ってみると、ははぁ、落とし物です。急いでいたのでバッグから落ちたのでしょう。女の子は気付かなかったみたいです。
よぅし。
ここは紳士・ヒダマルが拾って、追いかけて、あの子に渡してあげようではないか。森のくまさんと洒落込もうじゃないか。
そう考えました。
ええ、そう考えました。
善は急げと手を伸ばし、ソレを拾い上げるまでは、そう考えていました。
きたなっ。
いやいやいやいや。きったな。
花のJKが持つもんじゃないわコレ。女の子が落としたんじゃなくって、はじめからここに落ちてたんだわ。
偶然足がぶつかって跳ねたのを、落としたと勘違いしたのでしょう。明らかにゴミです。色はくすんだピンクです。キティちゃんだった気もします。
そういうことなら、ヒダマルの出番はありません。
走り去ったあの子に問題は起きていないので、めでたしめでたしです。
しかし。
次に、ヒダマルは、こう考えました。
……これ、置いていくのも忍びないな?
ゴミですから。明らかにゴミですから。道で拾ったゴミを、元の場所に戻して去るというのも、心の倫理チェッカーに引っかかるものを感じます。このゴミの所有者は既にヒダマルなのです。
環境問題。マイクロプラスチック。海のお魚さんたち。保育士さん。いま車来てないから車道渡っちゃえ~とかできない保育士さん。そう世間の目。
……うむ。
このまま持ち歩いて、どこかでゴミ箱を見つけたら捨てよう!
我ながらなんというジェントルマンでしょう。見ているだろうかお天道様。ヒダマルは良い子ですよ。因果応報たのんますぜ。
右手にゴミを携えて、世のため人のために行動する自分を褒めちぎりながらルンルン歩いていると、コンビニの前にあの女の子がいました。男の子と一緒にいます。案の定です。ニッポンの未来は世界が羨みます。おもうぞんぶん青春するがいいのです。
保育園の子どもたちも十年後にはあんなふうに、なんてニヤつきながらコンビニを通り過ぎ、
「あの」
声がかかりました。
「すみません」
振り返ります。
男の子がいます。
やや緊張した面持ちです。
彼の後方には、女の子もいます。困り顔、いや、不審な顔で視線を向けています。状況を見守るような雰囲気です。
「あの、すみません、それ……、」
あっ?
これ?
この櫛?
あ、落ちとったんかと思って……、あ、あの子の。
そう。
はい。
じゃあねー。
……しばらく歩いて、気付きました。
ヒダマル、女子高生が落とした櫛を黙って持ち去る変態ポジションに収まってない!!??
あっれー!?
なんで!?
自分で言うのもなんだけどさっ、
最初から最後まで優しさと思いやりしか発揮してないのに!?
この仕打ちある!?
まじかーそうかーこれが人生かー……!
だってあんなきったない櫛をさぁ? 持ち歩いてるとか思わんさー……。新しいの買いなよー……。
という、ね、ヒダマルが経験した世にも奇妙な物語、誰も悪くない話でしたとさ……。