ヒダマルのアニメ日記。

アニオタ・元保育士・隠れアスペルガーと、三拍子揃ったヒダマルがお送りするアニメ感想ブログ。アニメ関連の雑記や分析なんかもチラホラ。毎日午後8時に更新予定です。

『キノの旅』  第二話「コロシアム」


 これは1巻の第4話として収録されている話ですね。ページ総数は66。

  1巻の話はどれもキノファンの中で非常に人気が高く、公式の人気投票でも上位に食い込んでいます。
 特にこの話は、後にも活躍するメインキャラクターの一人「シズ」と、その相棒の「陸」が登場するので、キノを語る上で外せない1話となっております。

 更に、キノの戦闘能力が明確に開陳されたのも、この話が初めてです。
旧アニメでは、キノの実力を示すための2話目として、2巻収録の「人を喰った話」が選ばれていましたが、今作ではこの「コロシアム」が第2話となりました。

 

 原作でキノが初めて発砲するシーンは省略されていたのが残念ですが、2003年版では前後編で構成されてましたし、切り詰める必要があったというのも一つの理由でしょう。まぁあれは少々キノらしくない行動でもありましたからね。
 というのも……、実は、1巻のキノとエルメスは、今と微妙にキャラが違うんですよ。言葉遣いとか、ごくごく微細な差異なのですが、改めて読み返してみると新たな発見がありますよ。

 

 ちなみに、作者の時雨沢恵一さんによると、応募原稿バージョンの「コロシアム」では、キノの上半身裸なサービスシーンなんかもあったそうです。
 キノのサービスシーンは非常に珍しく、たまーに水浴びする程度ですが、原作のあんな話やこんな話もアニメーションになってしまうのでしょうかっ。具体的には「帰郷」とか、「9巻のうらがき」とか。「うらがき」は原作とは違うか。

 


 前置きが超長くなりましたが、「コロシアム」ですよ。
 猛スピードでエルメスを走らせるキノ、石に乗り上げてちょっと空を飛べました。はて、モトラドは「二輪車。空を飛べない物だけを指す」はずですが。

  乱暴運転に不機嫌になるエルメスですが、キノ曰く「たまには自分の本当の実力を出すべきだ。そうしないと、知らない間に腕は鈍るものさ」だとか。


「緑に囲まれた、森の恵みの豊かな所」だと聞き及び(絶対、食べ物目当てだ)、以前から楽しみにしていた国に到着して、入国手続きを済ませたキノ。しかし、そこで衝撃の事実を知らされます。
 この国では3ヶ月に一度、「市民権獲得」の為の殺し合いが開催されるというのですが、なんと、何も知らずに入国した旅人であっても問答無用で、その殺し合いに強制参加させられてしまうのだ! なんて国だ!(某芸人風に)
 こんな理不尽でクレイジーな国になってしまったのは、7年前、王様が今の王に変わってからだそうです。なんて王だ! くっ、語呂が悪い。

 

  キノも戦いに参加することになる訳ですが、そこはパースエイダー(注:銃器のこと)の達人ですから、実力を思う存分発揮することになります。

 冒頭で「たまには本気を出さないといけない」と発言しているキノですが、この作品には、決まってこういった伏線と言うかフラグが設置されていますよね。始めに言った言葉や状況が、後に響いてくるのです。


 キノの最初の相手は「鉄球男」。

  筋骨隆々なスキンヘッドで、なんか世紀末世紀末した雰囲気を醸しています。キノ世界では銃が戦闘の主役ですから、出てくるアニメを間違えてますね。この世紀末的ビジュアルだったら『少女終末旅行』にピッタリ、いやそうでもないか。ないな。

 コロシアムの特等席で殺し合いを眺める「国王」を睨むキノ。
 キノは相手に降参を促しますが、もちろん聞く耳持ちません。戦闘開始のラッパと同時に、敵の持つ鉄球の鎖を打ち砕いて実力を示したキノは、あっさり勝利します。

 

 続く相手は、「鉄片ブーメラン男」。

 細身の忍者みたいな外見ですが、これなら『BORUTO』の世界で一旗揚げられ、ないか。ないな。あの世代超強いし。
 もちろん、キノの勝利です。

 続いて「パースエイダーお姉さん」「火吹き老人」を圧倒して退け、キノは決勝戦に進みます。原作では、勝負の中にもっと駆け引きがあったのですが、やはり尺の都合からかカットされてしまいましたね。
 よぅし、この際ですからキノの戦闘ぶりを始め、カット部分を逐一説明しちゃいましょう。第2戦目となった「鉄片ブーメラン男」には実は原作キノでは口癖があって(以下、ヒダマルのキノ蘊蓄が約2000字に渡って続きます)

 


 ふう、語り切ったぜ。
 決勝戦へ挑むキノですが、その前夜、なにやら科学実験的な火遊びをしています。愛用するハンド・パースエイダー(注・パースエイダーは銃器。この場合は拳銃)、リヴォルバーの「カノン」に使用する「液体火薬」なるものを煮詰めて、高濃度にして、特製の弾丸を作っているんですね。最終戦に向けての秘密兵器ですね。危ないので、良い子も悪い子も真似してはいけません。ヒダマルとのお約束。


 暇なエルメスが片手間に取材したこの国の歴史を耳に入れながら、キノは作業を続けます。どうも、諸悪の根源はやはり「今の王様」みたいですね。
 そしてキノは、「できた!」とお手製の弾丸をつまみ上げて、子供のように喜びました。

 ……ちなみに、この「できた!」の台詞と描写ですが、時雨沢さんの別作品『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインⅣ ―サード・スクワッド・ジャム ビトレイヤーズ・チョイス〈上〉―』(タイトル長っ!)の中でも使用されています。246ページにキッチリと。
 つまり、セルフオマージュによるファンへのメッセージですね。遊び心が光ってます。


 そして、いよいよ決勝戦。今回も、王様は特等席で観戦しています。
 相手は「シズ」と名乗る、緑色のセーターを着た青年です。彼の腰には、一振りの刀。今までの戦闘狂とは、どこか違った雰囲気を持つ男ですね。優しそう。これなら『るろうに剣心』の、うん、もうやめとこう。

 

 開始前、キノに降参を求めるシズ(やっぱり優しい)。「どうしても市民になって、やらなければならないこと」と語るシズですが、キノの「今ここで戦いたいんです」という返答を受け、悲しい表情で抜刀します。銀の刀身が姿を現しました。

 キノが自動式ハンド・パースエイダー「森の人」を向けるも、銃口の軌道に刀を合わせ続けるシズ。試しに一発撃ってみると、なんと、刀ではじき返しましたっ。流石のキノもビックリです。石川五右衛門さながらです。『トリビアの泉』でもやってましたよね、コレ。

 このシズという青年、パースエイダー使いが多い『キノの旅』の世界観の中、「刀で銃を弾く」ことで勝利を収めてきたのです。最終戦だけあって、かなりの使い手と見受けられます。


 一瞬で勝負を決めるべく、瞬時に間を詰めるシズ。刀の一振りで、キノの「森の人」を弾き飛ばします。

  そのまま、峰打ちでキノの頭頂部を狙うシズ。しかし、キノが交差させた両腕に防がれます。キノは、服の下に鉄板でも仕込んでいたのでしょう。
 キノの実力に感心するシズですが、改めて降参を提案します。「これ以上やると、死ぬよ」という、殺意の言葉と共に。
 しかしやはり、キノは応じません。

キノ「実はですね……。ボクは今までこの国で、一人も殺していません」
シズ「へえ……。それで?」
キノ「それでですね」


キノ「最後に一人くらいは、派手にぶっ殺してやろうと思ってるんですよ

 

 悲し気な瞳で説得を諦めたシズは、再びの縮地。
 大壇上に構えて、キノの命を狙います。

 しかし、キノは速撃ちの要領で、シズの攻撃よりも先に、「カノン」の銃口を向ける。


 敗北を理解し、刀を振り上げたままの姿勢で降参を宣言するシズ。しかしキノは、「あなたの後ろには、誰がいる?」と謎の問いかけを投げるのみ。
 キノの思惑に感づいたシズ。「かがめ!」という命令に従って、膝を折ります。

 

 同時に、「カノン」の引き金を絞るキノ。

 大きく白煙を残しながら放たれた特製弾丸は、一直線に「国王」の頭部へ。

 

 国王は「流れ弾」に当たり、顎より上を丸ごと炸裂させて、死んだのだった。

 

 あのままシズの顔面を撃ち抜いて、さっさと出国するという方法もあったでしょう。しかしキノが「派手にぶっ殺す」相手は、シズではなく。
 標的は初めから、シズの背後にいる、「この国の王様」だったのです。

 流れ弾に見せかけて王様を殺した勝者・キノは、この国の新たな法律として、「新しい王を決めるために、今より、国民全員で殺し合いをする。勝った者が、この国の次の王様」というルールをこの場で付け加えます。

 すぐに殺し合いが始まるコロシアムを背に、キノは出国しました。

 

 取り残されたシズはというと、茫然自失状態。襲い来る住人を適当に切り捨てながら、王の亡骸のもとへ歩きます。不確かな足取りで、死体の前に立ち、

「……お久しぶりですね」

 


 湖で休憩しているキノとエルメス
 ――キノはかつて、あの国に関して、旅の途上で出会った婦人に「素敵な国。キノさんも是非訪れるべき」と聞いていた。その言葉は、かの国が地獄と化した後に伝えられたものだった。
 彼女の心に何があったのかは計り知れませんが、複雑な気分のキノです。

 

 出発しようとしている時、湖畔に停まる一台のバギーを発見します。
 運転手はシズ。助手席には、大きな白い犬が一匹。

 

「父を殺してくれて感謝する」と頭を下げるシズ。この青年、あの国の元・王子様だったのです。

 国をデタラメにしてくれた父を、市民権獲得のメダル授賞式の際に切り殺してやろうと考えていたシズ。復讐を達成していればその場で撃ち殺されていたであろう彼は、結果的に、キノに助けられた形になります。助手席の白い犬・陸も、ダンディボイスでお礼を述べました。

 そう。この犬、陸、喋るんです。
 この世界の犬は人語を喋るんですね。1巻を読んでいる時はちょっと混乱でしたよ。二輪車は喋るわ犬は喋るわ、「なんだこの世界観」って衝撃を受けました。

 ついでに。
 そう。キノは、女の子なんですよね。
 1巻の時点ではキノの性別に関して曖昧な描写しかされていなかったため、黎明期のファンの間では「キノ性別論争」が勃発する結果となりました。喧々諤々でした。あの頃はヒダマルも若かった……。


 ところで、陸とエルメスの火花があまり散らなかったのが消化不良です。この二人(?)、原作ではとても仲が悪く、お互いに毒舌を浴びせ倒すのですよ。

 原作5巻のあとがきでは「(エルメスは、陸との)三日三晩に渡る口げんかで決着がつかなくて、五十メートル背泳ぎで雌雄を決するとか言って朝から水中眼鏡つけて海へ出かけて、まだ帰ってきてないです」と語られるほどの仲の悪さが特徴なのですが、それが再現されていないというのは、なんだか勿体ない。


 しかしまぁ、全体的にとても良い回でしたね。
 初登場のシズの良心、キノの圧倒的な強さなんか、ビシバシ伝わってきました。楽しませていただきましたよ。もうおなか一杯。

 次回、「迷惑な国」。
 ダイナミックなの来たなー!!