ヒダマルのアニメ日記。

アニオタ・元保育士・隠れアスペルガーと、三拍子揃ったヒダマルがお送りするアニメ感想ブログ。アニメ関連の雑記や分析なんかもチラホラ。毎日午後8時に更新予定です。

『だがしかし2』 第四話「ホームランバーと花火大会と……」


 8月20日。

そんでさ、ほたるちゃんも誘ってさ、みんなで行こうよ! 5時に集合ね?

 耳に当てた携帯電話から、サヤちゃんの楽しげな声が聞こえます。
 いつもの4人で待ち合わせして、花火大会に遊びに行く予定を立てているのです。

サヤ『じゃあ5時に現地で。ほたるちゃんに連絡しといてくれる?』
ココノツ「うん、分かった。まぁ待ってれば来ると、

 言いながら。
 駄菓子屋を出ると。

「思う……、け……、ど……」

 店先で、アイスが詰まった冷凍庫を喰らいつくような眼差しで睨む、枝垂ほたるさんに出会いました。
 そうです、呼ばなくても勝手に来るんですこの人は。

 

ホームランバーと花火大会と…

 

 ここは駄菓子屋なので、しかもシカダ駄菓子なので、彼女がいることは何ら不思議ではないのですが、

「あの。なにしてんすか、ほたるさん」
「しっ。いま集中してるから……」

 さいですか。
 煽情的な姿勢のまま、何かを見極めようとするほたるさん。おもむろに扉を開け放ち、無数の棒アイスと対面します。

 立ち上る冷気。
 頬をつたう汗。

 緊張の一瞬――


「はッ!!」


 気合の吐息と共に、引き抜いたのは一本のアイス。その名も、『ホームランバー』


「……これ、ひとつ下さいなっ!」


 普通に買えないんでしょうかこの人は。

 

 


 ホームランバー。
 言わずと知れた、バータイプのアイスクリーム。日本初の当たり付きアイスなんだそうです。へー。
 今も根付いている「当たったらもう一本」というお馴染みルールの他にも、色々な商品がもらえることもあったそうです。へー。

 ちなみに、コレのことです。

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 うーんでも、ほたるさんはホントこーゆーくじ運とか勝負運はないんですよね。前回もベーゴマで負けてましたし。


 しかし、いつだって本気なのがほたるさんです。今回こそは当たるかもしれません。まぁ外れるのでしょうけど。

 ホームランバーの包みを開け、髪をかき上げつつ、ココノツの前でアイスを頬張るほたるさん。いやもう、えろい。こんなにかってほど、えろい。ココノツたじたじ。

 

 あ、そんなこんなしてるうちに、花火大会へ向かうバスの時間が迫ってきました。すぐに出発しないと間に合いそうにありません。
 そういや、ほたるさんに花火の事を伝えてもいませんね。急いで説明するココノツくんです。

ほ「あら。何か用があったの? ごめんなさいね」
コ「そうじゃなくて、言い忘れてて。あの、花火大会が海であって、その……。今日ほたるさんを誘おうと、

 

 不意に。

 絡み合った視線が、言葉を止めてしまいます。


 驚いたみたいな彼女は、軽く瞼を上げ、
 ひとつ、瞬きをして。


「…………、2人で?」


「え、」

 

 風鈴の音ばかりが、やけに耳に付く。

 そんな、8月20日。

 

 

 

 

 

 一緒にバス停へ急いだものの、ちょうど出発してしまいました。次のバスは、なんと2時間後。

 という訳で、ココノツくんが身体を張ります。真夏に自転車2人乗りです。
 柑橘系の2人が歌うから爽やかなのであって、現実のしかも平地でコレは拷問じみてますね。せめてこの長い長い下り坂にして。ブレーキいっぱい握りしめさせて。
 だがしかし。今の彼にとっては、このしんどさが丁度良い。

 先ほどの視線と、言葉の意味を、考えなくて済むから。

 


 会場付近では、遠藤兄妹がココノツとほたるさんを待っています。
 今日のサヤ師は浴衣姿。髪も後ろでくるんとまとめて、いつものヤンキーな雰囲気が軽減されています。要するに気合入ってます。

 けれど、ココノツは先ほどから電話に出ません。花火大会だけあって人出は多く、待ち合わせは厳しくなってきました。
 それでも、花火を楽しみにしている妹を見て、気合の入った妹を見て、「なんとかなるだろ」と励ます兄・豆くん。

 飄々としてる様に見えて、彼は知ってます。
 花火を見るのが、楽しみなんじゃなくて。
 あの人と見る花火が、楽しみなのだと。

 

 


「なんとかなんのかこれっ……!?」

 ほたるさんを乗せて、坂道を上る自転車。
 木々の隙間から差し込む西日は、開始時間が迫っていることを示しています。ココノツは頑張ってますが、この調子では間に合わないかもしれません。

 


「…………、2人で?」

「ああ、違います違います。サヤちゃんと豆くんと待ち合わせして、4人で見ようって。ほたるさんも誘おうって話になって」

 


 あの時の会話が、瞳が、リフレインする心。

(なに言ってんだ、俺……ッ!!)

 つかみどころのない、こびり付くような感情に身を任せ、全身でペダルをこいでいたココノツでしたが、不意に荷台が軽くなりました。ほたるさんが飛び降りていたのです。

ほ「少し……、休憩しましょう」

 

 

 

 すっかり日が落ちて、暗い海と星空が見えるバス停に座る、ほたるとココノツ。約束は守れませんでしたが、ほたるさんに、ちゃんと本当の事を伝える時間が出来ました。

ほたる「ごめんなさい。変に悩ませちゃって

 けれど、ココノツの都合など、彼女は知ったことではありません。出会った時から、変わりません。

今日は少し、2人で話したかったの

 まっすぐに、海を見つめながら。

ココノツくんのおかげで、あり方や姿勢を学ぶことが出来たわ。喫茶遠藤の2人にしても、そう……。新鮮な毎日だった。こんな楽しい夏休みは初めてよ

 満足気に、誇らしげに。ほたるさんは、そう言ってくれました。

コ「僕も楽しいです、すごくっ。じゃなくて、えっと……」

 そして、ほんの少しだけ視線を逸らして。
 大きな双眸を、髪で隠しながら、

最初の目的は、今はあまり関係ないのかもしれない……。今は、あなたと話をしていたいわ


「え、」

 

 


 時が、止まりました。

 


 そこには、

 ココノツを見つめるほたるさんと、

 まっすぐな視線を受け止めるココノツと、

 空いっぱいの星と、

 揺れて煌めく海だけがありました。

 

 

 

 

 

 

 


「ほた

 

 

 花火が。

 

 暗い夜空の真ん中で、光と炎の大輪が、刹那の色を創ります。
 大気を喝と振るわせて、熱波を混ぜて届けるように、我も我もと閃きます。

 星は誰もが忘れてて、月は裸足で逃げ出して、太陽だって手の届かない、あの夜の中で。


 夏だ、夏だ、夏だ。

 

 

 


 諦めていた花火を見られて、俄かに興奮するほたるとココノツ。
 けれど彼女は、すぐに瞳を閉じて。狂乱する光と、腹に響く低音を受けながら、

ココノツくん。……これ

 一本の棒きれを、ココノツに手渡しました。

 それは、「当たり」
 ホームランバーの、当たりの棒でした。


 何を引いても当たった試しのない彼女の快挙を信じられないココノツでしたが、唐突に胸倉をつかまれて、
 引き寄せられて、

言ってなかったけど、私はけっこう忘れっぽいのよ

 白くて明るい、顔が近くって、

だから、無くさないように、

 

…………あなたが持っていて

 

 花火が。


 花火だけが。

 

 

 

 

 

 

 

 

こうすることで、今度突然ホームランバーが食べたくなった時、まるでタダでもらっちゃったようなお得感もあるって寸法よっ

(チューされんのかと思ったッ。チューされんのかと思った、チューされんのかと思ったチューされんのかと思ったぁ――!!)


 心臓バクバクなココノツくん。
 すっげぇ良い雰囲気かと思いきやっ。

「今日は帰るわ」

 マイペース過ぎるほたるさん、ひとりで帰るみたいです。


「さよなら」


 ほたるさんが、歩き出しました。
 花火にも、ココノツにも、もう視線を投げることは無く、胸を張って、ただ前を向いて、歩いて行きます。

 夜と花火の中で、ほたるさんの歩く景色を、鹿田ココノツが見ていました。

 

 

 

 


 その日は雨でした。
 雨に濡れるのは、誰だって嫌です。


 その翌日も、雨でした。
 だから、理由は明白です。


 その次の日から、快晴が続きました。

 


 駄菓子屋の前を見渡しました。

 ベーゴマで遊んだ神社に行ってみました。

 駅のホームにはいませんでした。

 あの夜、一緒に花火を見たバス停にも。

 

 

 夕焼けと、蝉の声に包まれて。
 ひとりで歩くココノツのポケットには、一本の棒きれ。


 夏が終わり、
 そして、冬が来ます。

 

 

次回、「救急車とタラタラしてんじゃね~よと……」。