ヒダマルのアニメ日記。

アニオタ・元保育士・隠れアスペルガーと、三拍子揃ったヒダマルがお送りするアニメ感想ブログ。アニメ関連の雑記や分析なんかもチラホラ。毎日午後8時に更新予定です。

『宇宙戦艦ティラミス』 第一話「FLY IN SPACE/NAKED DANCE」


 星屑に囲まれた宇宙空間。


「地球連邦軍最重要戦艦ティラミス」は、今日も無明の世界を漂っていた。

 

 

FLY IN SPACE


 エアロック作動確認……

 

 ハッチ、解放します……

 


 戦艦内部にて佇む白き巨躯の名は、「デュランダル」

 その操縦席にて、パイロットである青年「スバル・イチノセ」は深く息を吸い、吐いた。

(俺は……、コックピットが好きだ……)

 

 


 デュランダル、カタパルト接続完了……

 これよりスタート体勢に移行……

 

(まるで……、お母さんの胎内にいるような……)


 ひと時の安らぎ。

 しかしこの数分後には、生死を賭けた戦場へ送り込まれる運命にある。

 


(この広い世界で……、一人になることを許されるただ一つの場所……。そんなコックピットに、ずっと包まれていたいんだ……)

 


 いや、あるいはこうも言えるのかもしれない……。

 コックピットでのみ至上の安らぎを覚えられる青年スバル・イチノセは生来、戦場でしか生きられない性にあるのだと。

 

 

 

 

 彼の真横にモニターが開き、オペレーターが声をかけた。パイロットと同年代の、帽子を目深に被った青年である。

『スバル。相手は五機だ。やれるか?』
「俺が無理だって言ったら、コーディさんが代わってくれるんですか?」
『無茶言うなよ』

 出撃を前にして、緊張感のない軽口を叩き合う二人。 

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〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉


 ……この会話が最後のやり取りになる可能性など、互いに心得ている。

 けれど、だからこそ。
 軽口を交わすのだ。笑顔を見せるのだ。

 最後に、ならないために。

 

 

 

「冗談ですよ。五分……、いや、三分で終わらせます」
『頼もしいねぇ、我が軍のエースは。……120秒後に射出。すぐに敵機と接触だ。死ぬなよ、スバル……
「了解……!」

 モニターが消え、コックピット内は再び孤独の静寂に包まれた。


(120秒か……。それだけあればッ!

 瞳を見開き、戦闘を目前にした青年が伸ばした右手の先には、

 

 

 

 

 ぱりぱり。


 ごそ。

 

 

「一本はいけるなっ!」

 

 串カツ。


 ほかほかと湯気をたてる、香ばしそうな串カツが、一本。

 


 あのホラ、スーパーの総菜売り場なんかでよく見る、いや最初からパックにしてあるヤツじゃなくてね? 揚げ物がこうずらーっと並んでて、そっから選んで自分で容器に入れるタイプのお惣菜。あの串カツ。

「どれを買おうかな~」なんて悩んでるといつの間にか他のお客さんの邪魔になっちゃってて「あっ、すみませ~ん……」ってなって結局欲しいの狙えないままに終わっちゃうヤツ。あの串カツ。

 あとさ、パックが大小あって先に手に取って揚げ物を選ぶ訳ですけど、「あんまり買わないだろ」と思って小さいほう取ったら二つくらいしか入んなくってムリヤリ三つ入れたら最後輪ゴムで止める時思いのほか苦戦して「こんなはずじゃなかった」ってなりません? あの串カツ。

 


 うん、


 あの串カツ。

 

 

 


 しかし、スバル・イチノセにとって、この串カツはただのおやつ以上の意味を持つのです。

 何故ならば……、


 彼は、年上ばかりでイケイケな感じのパイロットたちの会話にうまく入ることができず、気がつけば宇宙スムージーの成分表を丸暗記してしまう程なのです。

 

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〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉

 

 要は、ぼっちなのです。

 ぼっちパイロットなのです。


 そんな彼にとって、唯一ひとりになれる空間・コックピットで食べる串カツは貴重な便所飯……、いや、コックピット飯なのです。

 

 


「いただきま~……、っと。ソースを忘れる所だった」

 ぼっちの特性のひとつ・「やたら独り言が多い」を発揮しつつ、ペットボトルに入ったソースに手を伸ばすスバル。


(ここは俺の聖域だ……。ソースの二度付けを咎める物もいない。全てが俺の思い通り……っ!

 コックピットでの自由を満喫しつつ、ペットボトルの中へ串カツを突っ込むスバルでしたが……、

 


 ばりばりばりぃ。

 


「しまったッ! 衣が……ッ!!」


 ペットボトルの入り口でしごき落とされた串カツの衣が、コックピット内部に漂ってしまいました。
 宇宙空間ですので、そりゃもう浮遊します。漂ってます。このままでは、色々と油まみれ。

(デュランダルのコックピットは今最悪の状況にッ! オレの聖域が脂で汚れるのは避けたいッ! それにはまずティッシュだッ!!)

 安全ベルトを外し、座席の裏にある箱ティッシュへ必死に手を伸ばすスバル青年。しかし、

 


 がたんっ。


「!?」


 射出20秒前……

 


 タイムリミットが近づき、白き人型戦闘機・デュランダルはカタパルトを移動していきます。
 その振動で、


「カツの下にあったキャベツとかがぁぁーーーーッ!!」


 てんやわんや。

 

 


 カタパルト、推力正常……

 進路、オールクリア……


「ちょっと待ってくれデュランダルッ! まだ一口もッ、」


 デュランダル出撃!


「おうぶばぶぐぐぐぐッ!?」

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〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉

 

「まだ一口もおォォォォーーーーッッ!!!!」


 怨嗟の雄叫びをあげつつ、敵機へ猛攻をかけるデュランダルでしたとさ。

 

 

 

NAKED DANCE

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〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉

 

 シャワーを浴びるエースパイロット、スバル・イチノセの背後から、太くたくましい声がかかった。

「ツラがきれいな奴ぁケツもきれいなんだなぁ」
「っ!? ちょっと! 覗かないで下さいよっ!」

 筋肉と無精髭が特徴的な男の名は「ヴォルガー・ハマー」
 やたらとスバルに絡んでくる、彼が苦手としている相手である。そう、上の方で紹介した「ヤンキーに楽しく絡まれるぼっちの図」の男である。うっとうしいのである。

 

 

 

 プライベートな空間を邪魔されたスバルは、イライラしながら頭を拭いていた。
 その時、


『敵機接近! パイロットは至急出撃して下さい!』


 警報音が鳴り響きました。
 エースパイロットであるスバルも、急いで服を着て、デュランダルで出撃します。

 

 

 

 


 ライフルやビームサーベルを駆使し、敵をなぎ倒していくスバル・イチノセ。エースの肩書は伊達ではありません。

 しかし、

(おかしい……。何故かとてつもなく息苦しい……っ!?


 どうしてか、謎の不快感に襲われるスバル青年。
 彼にとってコックピットは聖域。敵の数が多いとはいえ、息苦しさを感じるはずはないのです。これはおかしい。

 調べたところ酸素量も問題なく、(まさか……?)と思いつつパイロットスーツのチャックを開けると……、

 

「あぁッ!?」


 スバルくん、Tシャツを後ろ前に来てました。

 しかも裏返しで。

 

 

 イライラしてるとこに緊急招集がかかったから、間違えちゃったんですね。これは息苦しい訳です。

「戦闘中だというのにオレは、喉のタグが気になって仕方がないッ!」

 不快感に襲われながら、敵機の猛攻を防ぐスバル・イチノセ。

 

 

「コックピットの創造主」ことスバルは、空間内での(謎の)万能感を根拠に「戦いながら服を着直す」という荒業に打って出ます。

 

「まずは右ッ!」
 ずぼぉッ!!

「次は左ッ!」
 ずぼぉッ!!

 


(ダメージは最小限に抑えつつ、隙を見て残りイッキに脱ぎ去るッ!! 今だッ!!)


 ず、ぐぐぐっ……。


(ダメだッ!! ヘルメットが邪魔して脱げない……ッ!?)

(まッ、前が……ッ!!)

 脱ぎかけのシャツに視界を遮られ、敵機の蹴りをもろに受けてしまったデュランダル。

 


「くそぉ……、このおぉぉぉぉーーーーッ!!」


 バリバリィッ!!

 

 

 シャツを破り捨てたスバルの中で、何かが弾けた……。

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〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉

 誰にも見せることのできない、ネイキッドの自分を、コックピットの中で解放する……。

 

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〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉


 生まれたままの姿で敵を撃退したエースパイロット、スバル・イチノセは、無残に破れたお気に入りのTシャツを、宇宙空間へ捨てたのだった……。

 

 

 

あとがき。

 シリアスなロボットアニメかと思わせて、コックピット内でのてんやわんやで笑わせるアニメでした。絶対面白いやつ。

 10分で終わるので観やすいのも魅力です。

 

 完全無料のWEBマンガ雑誌・「くらげバンチ」に原作が連載中だそうです。

 くらげバンチと言えば、去年やってた『少女終末旅行』も載ってるやつですよね。かなり興味出てきました。

 


 いやぁ、ぼっちにとっては非常に共感できる内容となっておりますね。
 ヴォルガー・ハマーさんも悪い人じゃないんですが、もうちょっと距離感というものを覚えて欲しいですよね。

 

 串カツたべたいなぁ。