『宇宙戦艦ティラミス』 第十三話「ATMOSPHERIC REENTRY/TO EARTH」

ATMOSPHERIC REENTRY

「ヴォルガー隊、三機損傷! 帰還させます!」

 メトゥスの民の猛攻に苦戦を強いられる宇宙戦艦ティラミスは、大気圏宙域まで押しやられていました……。

 

 

 

「いい? 出撃したら四分で戻ること。大気圏に突入したら、いくらデュランダルでも持たないわ」

 出撃直前の控室。
 エースパイロット、スバル・イチノセの身を案じ、心配そうに念を押すリージュ中尉です。

 今日も胸元が空いてます。

 スティッキィ・フィンガーズがいい仕事してます。

 

 

 

 憧れのリージュ中尉から声をかけられているスバルはというと、しかしどこか浮かない顔。ベンチに座り、視線は床を向いています。

「最近デュランダル調子悪いし、俺も良いトコなしだし……。いっそ戻れなくても……」

 いつになく弱気になり、瞑目するスバルでしたが、


「はいっ! 新しいヘルメット!」


 リージュ中尉は鼓舞するように、彼に真新しいヘルメットを持たせました。

「え……、これは」
「かなり使い込んでたし、シゲコさんに名前書かれて嫌がってたでしょ?」
「ええ、まあ……」
「それにさ、」


 優しく続け、彼の両頬に触れる中尉。
 スバルの胸元のジッパーを閉めながら、

「デュランダルの調子が悪いからって、なんでアンタまで元気ないのよ……」

 上目使いで。

「悔しいけど、今の私たちは、アンタに期待するしかないから……」
「リージュ中尉……っ!!」

 床へ投げられていたスバルの視線は、今、希望へと向けられました。


 視線の先、スティッキィ・フィンガーズに挟まれたふくらみが、柔らかなY字を描いています。

 Yは豊かのYです。

 

 

「ヘルメット代は立て替えておくから。ちゃんと返しなさいよ?」

 大人のお姉さんな雰囲気を振りまきながら、彼女は去って行きました。

 

 

 

 


 宇宙という名の戦場へ向かったコックピットの中。

 エースパイロット、スバル・イチノセは、リージュ中尉に託された真新しいヘルメットを真剣な眼差しで見つめていました。


 早速、バイザーに保護フィルムを貼ろうとしていたのです。


 オイ。
 主人公。
 これ最終回。


「一発勝負で球面て難しいんだよなぁ~……。2,800円もしたし……」


 じゃねぇよ。
 2,800円じゃねぇよ。
 これ、命がけの最終回。

 


 今日も今日とて残念な主人公にパッカー君が声をかけますが、

「スバルさんっ、そんなことよりもうすぐ敵と接触するですぅっ!」
「付属のクロスで表面のホコリを取る、か……」
(ダメです……。全然耳に届いてないです……)

 スバルの頭の中は、「新品のヘルメットのバイザーに、如何に綺麗に保護フィルムを貼るか」で占められています。

 

 

 更に、

 がばぁっ。

 スバルくん、唐突に衣服を脱ぎ棄てました。
 ネイキッドモード再び。


(も、もしかして、衣類の繊維が付かないようにということですかぁ……!? 保護フィルムに対する執着が、常軌を逸しているですぅ……っ!!)

 スバルの奇行は人工知能さえ引かせます。

 

 

 

 わずかに震える指先で、ゆっくりと、保護フィルムを貼り付けようとするスバル。
 しかしその時、敵機がやってきました。

 常闇の宇宙空間を切り裂く、その黒い姿は……、スバルBッ!!


 因縁の相手、黒いデュランダルに蹴りを入れられました。
 スバル、もう保護フィルムどころじゃないぞ。

「ぐっ!? ……、あああああぁぁッ!?

 頭を切り替えて戦わんと、奇跡的に生きながらえて来た最終回で鬼籍に入るというダジャレみたいなオチに


「保護フィルムに気泡がッ!!」

「気泡が三つも入ってしまったぁぁぁーーッ!!」


 ぁぁあブレないッ!!

 この人は本当ブレないッ!!

 むしろ凄いよ大物だよもう好きにやんなッ!!

  


 ガシィッ!!

 

「スバル。チェック・メイトだ……(チェスはやったことない)」
「兄さんか……ッ!」

f:id:hidamaru:20180626135845j:plain

〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉

 

 スバルの実の兄、イスズ・イチノセも現れ、デュランダルを背後から羽交い絞めにしました。
 身動きが取れない中、黒いデュランダルの大鎌が煌めき、保護フィルムには気泡が三つも入っているという大ピンチ。

 


「デュランダルはケリュケイオンが押さえるっ! お前はコイツの息の根を止めろっ!」

 鎌を振り上げるスバルBを見て、勝利を確信するイスズ。
 ふっと気を抜いた瞬間、しかし何かに気付きました。

 


「……ん? あ?」

 

(一張羅の袖が綻んでいるぅ……ッ!?)

 


「待て。少しだけ待てっ」

 止めを刺そうとするスバルBに「ちょ待って。タンマ」のジェスチャーをするケリュケイオン。

 

 スバルは全裸にヘルメットを被り、いよいよ戦う構えです。
 生き別れの兄、そして親友(陰毛)の敵との戦いですから、それはもう燃えることでしょう。
 さぁスバル、いよいよ本気を出す時が来たぞッ!

「どうしても戦うっていうんなら……! イスズ兄さ、ッ!?


(……保護フィルムの気泡に「コクダニ」がッ!! ああああああーーーーッ!!)

f:id:hidamaru:20180626134541j:plain

〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉

 


■コックピットダニ[別名:宇宙ダニ]
 背中に星の模様がある以外はサイズ・吸血量など地球のダニとほぼ同じである。


 気泡の中にダニを封入しちゃったという、またいらんことに意識を奪われるスバルくん。


 そうこうしてる内に……、

「大気圏突入」のアラーム音が鳴り響きました。

 

 

 

 

 

「デュランダル、減速できませんっ! このままでは、大気圏にっ!」

 ティラミス艦内にて、スバルの身を案じる仲間たち。
 ルロワ艦長を初め、ヴォルガー中尉、リージュ中尉も険しい顔で息をのみます。

 

 

 

 

 

 

 もつれあったまま大気圏へ突入する、スバルとイスズ。スバルBはおいてけぼりです。
 道を違えた兄弟の、運命を賭けた戦いはクライマックスな状況ですが、

 

「あぁぁ~~もうっ、どうしてこうスッスと糸が通らないかなぁっ!?」

「うおおおぉぉぉぉぉぉ――――――ッ!!(カリカリカリカリカリカリ)」

 

 針に糸を通そうとする者……、
 保護フィルムを剥がそうとする者……、


 因縁の二人は、重力の底へ落ちて行きます。


 家でやれ。

 

 

 

 

 

 

「デュランダルとの通信……、途絶えました……」

 辛い事実を伝えるオペレーターの声に、視線を伏せるルロワ艦長。涙を流すリージュ中尉と、歯を食いしばり立ち尽くすヴォルガー中尉。

「いくら優等生のデュランダルでも、大気圏は……ッ!」

 

 そうだ、スバル。
 君はぼっちかもしれないが、仲間はちゃんとここにいる。

 帰ってこい、スバル……!

 

 

 

 

 

 

「くそっ、いつの間に大気圏に……!」

 よし気付いた。
 赤々と燃え落ちてる自分の状況にやっと理解が及びました。服も着直したところに、「オーバータイムだ、スバル」とイスズからの通信が入ります。

 

このままでは二人とも助からない。俺のグリフォンモードなら、入射角度を安定させて突破できる。お前は脱出ポッドを射出しろ。今回は俺が受け止めてやるっ!!

 

 敵であるスバルに対し、温情をかける兄。
 ケリュケイオンをグリフォンモードに変形させ、スバルを呼びます。

 


 しかし、

「スバル。おい、スバルッ!! 気を失ったか……。仕方あるまい。ここも戦場なのだ」

「スバルよ。自分の運命を呪うんだな……」

 返答がなく、落ちて行くままのデュランダル。
 兄は、弟との別れを受け入れました。

 

 

 

 

「スバルさん、早く脱出しましょう! このままでは、」
「分かってる! でも、デュランダルを捨てて自分だけ助かるなんてできないッ!!」

 ラップトップへ必死に何かを打ち込むスバルは、希望を捨ててはいませんでした。
 彼は、デュランダルも救おうとしているのです。


「いま一生懸命、質問文書いてるからッ!!」


 え?

 なんて?

 まさか、スバルくん……、


 一刻を争う極限状態の脱出方法を、ネットに頼ろうとしてる?

 

 

質問内容

間違えて大気圏に突入してしまいました。
助かる方法を教えてください。
私はティラミスという戦艦に所属している
19才のパイロットです。

 

 

「よし……! 生意気な感じもなく、当たり障りのないのが書けた……! 行くぞッ!」

「上記の内容で質問する」をクリックし、ネットの海へ蜘蛛の糸を探すスバル。
 すると、

「来たぞ、回答が来たッ!」

 早速に回答が来ましたよ。頼りになるなぁ。

 

 

 

kuroneko_ mikanさん
釣りならもっと設定にこだわった方がいいよ

manmarumamaさん
大気圏って「間違って」突入するものなの?www

kouta0528さん
突入したことがないのでわかりませんm(__)m

forever_desuyoさん
お前この前連れ子と一線を超えたって
書いてた主婦だろ!ネタ確定!

moko-mokoさん
(ヽ´ん`)ほいよ、これがアチアチ・大気圏突入ね

sarumaneさん
そこまでして承認欲求満たしたいの?アホくさ

 

 

 

(誰も……、真面目に取り合ってくれないッ!!)


 まぁ……、そらそうだ。

 

 

 


「なんなんだよッ!! 一体、誰のために戦ってると思ってるんだよ……!!」

 拳を叩きつけたコックピットは、既に触れられないほどの高熱に。


「外装温度、二千度を超えましたっ! 早く、座席の下の脱出レバーを! スバルさん、スバルさんっ!!」

 パッカーくんが脱出を促すも、彼の意識はもはや朦朧としています。
 ぼやけた視界の向こうに見えるのは、デュランダルとの思い出……。

 

 


「お前強ぇな……」
「お前もな……」

 殴り合いの末に寝転んで、同じ夕日に照らされたあの日。


「上司がクソでさぁ……」
「わかるわかる……」

 勤め人の苦労を知り、酒の味と共に分かち合ったあの日。

f:id:hidamaru:20180626135422j:plain

〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉

 

 灼熱の聖域で、デュランダルとのありもしないヤバい感じの思い出に浸るスバル……。

 色々と末期です。

 

 

 

 

 

 

「このまま……。死ぬのか……」

 

 

 


「死ぬのは……、」

 

 

 


「嫌だッ!!」

 

 


 最後の力を振り絞って、座席下のレバーを引くスバル。

「ごめん……ッ!! ごめんなデュランダル……ッ!! 俺は、地球の為にも、まだ死ぬわけにはいかないんだ……ッ!!」


 共に生きて来た存在に、デュランダルに謝りながら、未来へ向かおうとする青年。

「うおおおおおーーーーッ!!」


 両手でつかみ、体重をかけますが、なかなか動きません。

(こ……、この脱出レバー、かってぇーーーーッ!!)

 


 あーうん、こりゃ動かないはずです。

 だって、チャイルドロックがONになってるもん。

 

 注意:チャイルドロックがOFFになっていることを確認してから脱出してください。

 って書いてあるもん。

 

 

 

 


 大気圏突入の圧縮加熱により、熱量を増すデュランダル。

 

 赤く、熱く燃え上がる機体は、パイロットを乗せたまま、地球へ落下していきました……。

 

 

 

 

 

 

 

TO EARTH

 海。

 夕日。

 

「この重力……。懐かしい……」

 

 コックピットから降り、母星の重力に立つ青年の名はスバル・イチノセ。


「どうやら天国じゃなさそうだ……。そうか……」

 


 浅瀬に跪く巨体を振り返り、

 

「お前が守ってくれたんだな……。デュランダル……」


 俄かに、涙が溢れて。

 

 

 

 

 

 

 孤独な戦場で、スバルを包み込んだ。

 


 幾多の戦いを、スバルと共にした。

 


 どうしようもなくマヌケで、だけど決して憎めない、他人との関わりが苦手な青年を、最期まで守り抜いた。

 


 白い機体の名は。

 

 

  デュランダル。

 

f:id:hidamaru:20180626133224j:plain

〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉

 

 

 

 

まとめ。

 最終回でもいつもと変わらず、むしろフルスロットルでマイペースなイチノセ兄弟でした。

 流石は最終回、テンポの良さは随一と言っていいでしょう。怒涛の困難を勢いで乗り切る、これがティラミス節です。


 スバルとイスズが初めて戦ったり、リージュ中尉のキャラが久々に生かされたりと見どころもたっぷりでした。
 シゲコさんが少しでも出てたら完璧だったのに……。

 


 それと、

 10月の第二期放送が発表されています。


 ラストで地球に不時着したスバルですが、この後名古屋観光するらしいですよ。

 楽しみだ。